業務プロセス図を作成する意味と作り方!作成ポイントや注意点を解説
業務の可視化を行う際に多くの企業が作成している業務プロセス図。業務全体のプロセスを可視化し、より視覚的に把握するためにも業務プロセス図の作成は欠かせません。そこで本記事では、そんな業務プロセス図について、作成する意味から作り方まで徹底解説します。
目次
業務プロセス図とは?
業務プロセス図とは、業務の流れや手順を図式化したもので、具体的には、作業の段階、作業の前後の関係、作業内容、担当者などが記載されているため、業務プロセスの可視化に役立ちます。
図によって業務の流れを可視化できれば、不要な業務や効率化できる業務などを発見でき、さらなる業務効率の向上が見込めるようになります。このように、業務プロセス図の作成は、業務プロセスの共有や改善を円滑化するという意味・役割があるのです。
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業務プロセス図を作成するメリット
業務プロセス図を作成するメリットは以下の4つです。
- 属人化の防止
- 業務品質の安定化
- パフォーマンスの可視化
- 現状の課題や改善点の発見
順に詳しく解説します。
属人化の防止
業務プロセス図を作成することで、誰が見ても業務プロセスを把握できるようになるため、属人化の防止にもつながります。
大まかな業務プロセスは分かっていても、細かい業務プロセスは担当者にしか分からないといったケースは少なくありません。そのため、担当者の休暇や退職の際、業務が滞ったり円滑に引き継ぎを行えないなどの問題が生じてしまいます。
しかし、業務プロセス図によって業務の流れや手順が可視化されていれば、誰が見ても業務プロセスを把握できるため、引き継ぎが円滑に進むほか新人教育やマニュアルなどにも活用できます。
業務品質の安定化
業務プロセス図がない場合、担当者によってやり方が異なるため、業務品質にバラつきが出てしまうケースがあります。
しかし、業務プロセス図があれば関係者間で共通の認識を持てるため、業務の進め方を統一できて業務品質の安定化が実現できます。
また、業務プロセスが可視化されていれば、ミスが起こった際もどのタイミングで発生したかを発見しやすく、迅速な対応にもつながるでしょう。
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パフォーマンスの可視化
業務プロセス図では、「誰が」「何を」しているかを把握しやすくなるため、メンバーのパフォーマンスを可視化できます。例えば、業務Aが5つのプロセスを経て完了すると分かっている場合、業務Aが完了したタイミングで5つのプロセスを遂行したことが明確に分かります。
業務プロセスが可視化されていなければ、業務Aが完了したとしても、具体的にどのような作業を行ったかを客観的に把握するのは困難です。このように、業務プロセス図の作成によりパフォーマンスの可視化と把握が可能となるため、従業員のパフォーマンスの適切な評価にもつながるでしょう。
現状の課題や改善点の発見
業務プロセスが定着すると、処理している作業が当たり前に感じてしまい、非効率な作業や不要な業務にも気づかない傾向があります。また、課題があるとはなんとなく分かっていても、原因が分からないまま放置してしまうケースも少なくありません。
しかし、業務プロセス図を作成することで業務プロセスを可視化できるため、課題や改善点を発見することもでき、原因の追求や具体的な改善策の立案などにもつながるでしょう。
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業務プロセス図の種類
業務プロセス図は主に4種類あり、種類によって書き方や用いる図が異なります。4種類の業務プロセス図の概要は以下の表のとおりです。
種類 | 概要 |
JIS X0121(情報処理用流れ図) | 情報処理をあらわす流れ図。この図で用いられる記号はJIS規格のもの。処理を表す記号や流れも統一されているため、誰でも処理や業務プロセスの内容を把握できます。 |
DFD(データフロー図) | システムにおけるデータの入力元・出力先・格納先など、データ処理の流れを表す図。システムの分析やシステム設計の段階で使用されます。 |
UML (統一モデリング言語)アクティビティ図 | 特定の業務における開始から終了までの流れを表す図。実行される順に図式化され、並行処理や条件分岐などもある図です。 |
BPMN(ビジネスプロセスモデリング)表記法 | 特定の業務における開始から終了までの流れを表す図で、UMLのアクティビティ図と似た表記法。決まった種類の図や記号を使用するため、誰が見ても業務プロセスを理解できます。 |
業務プロセス図でよく使用する記号
業務プロセス図でよく使用する記号を1つずつみていきましょう。
端子・開始/終了
業務プロセスの「開始/終了」や「スタート/ゴール」を表す記号で、一般的には端子と呼ばれます。角の丸い四角形のなかに「開始」「終了」などを記載し、業務プロセスの始まりと終わりの部分に配置します。
プロセス・処理
業務プロセスの一つのステップを表す記号で、最も多く配置される記号です。四角形の図形で、記号1つにつき、1つの「処理」「作業」「手続き」などを記載します。記号1つに複数のステップを記載すると、業務プロセス図が分かりにくくなってしまうため、注意が必要です。
判断・条件分岐
「Yes/No」や「真/偽」が答えとなる判断、あるいは複数の選択肢に分かれる判断を表す記号です。ひし形の図形で、一般的にはひし形の「下」と「右」の2つの頂点から矢印が出て行きます。記号には、分岐する条件や判断基準などを記載します。3つ以上の条件分岐の場合は、この記号を組み合わせて表します。
ループ開始/終了
同じ処理を何度も繰り返し行うことを表す記号です。六角形の台形の図形で、ループ名やループの開始条件・終了条件をそれぞれ記載します。そして、ループの開始と終了の間に、繰り返し行う処理を「プロセス・処理」や「判断・条件分岐」の記号を用いて配置します。
データ・入出力
入出力が可能なデータや外部へのデータ出力、入力・参照としてデータを受領するなど、データやファイルの入出力を表す記号です。平行四辺形の図形で、一般的には、業務プロセス図の始めの方に配置されると「入力」、終わりの方に配置されると「出力」を表すことが多いと言われています。
システム・データベース
システムやデータベースへの入出力や保管を表す記号です。円柱の記号で、ユーザーによる検索やフィルタリングが可能なものを表します。
また、使用するシステム・データベースが複数ある場合は、システム名もあわせて記載します。
書類 ・ドキュメント
請求書・納品書・稟議書・会計伝票など、書類や帳票を表す記号です。長方形の下辺が波線になっている図形で、1度に複数の書類・ドキュメントが発生する場合は、記号を重ねて表現します。作業に応じて発生する場合は、作業の図形と重ねて表現します。なお、紙や電子データなど、書類の形式は問いません。
定義済み処理・サブルーチン
処理の一部を別の業務プロセス図に分けて記載する際に使用する記号です。
長方形の中に2本の線が両端に入っている図形で、すべての業務プロセスを1枚でまとめると長くなりすぎる場合に、業務プロセス図を分けて見やすくするために使用します。使用頻度や認知度が高い業務プロセスに使用されます。
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業務プロセス図の基本的な作り方
業務プロセス図の基本的な作り方は以下の通りです。
- 作成する目的の明確化
- 全ての関係者の洗い出し
- 業務プロセスの洗い出し
- 業務プロセス図の作成
- 詳細の追加・フィードバック
順に解説します。
1.作成する目的の明確化
まずは、業務プロセス図を作成する目的を明確にしましょう。業務プロセス図の作成はあくまでも業務プロセスを可視化する手段であり、ゴールではありません。
作成する業務プロセス図について、「誰が見るものか」「情報共有もしくは業務改善などの目的があるか」「どの業務が対象か」など、具体的な目的を明確にしましょう。
2.全ての関係者の洗い出し
次に、業務プロセス図作成の対象となった業務に誰が関わっているかを洗い出していきます。関係部門やクライアント単位だけでなく、必要に応じて担当者個人などまで細かく洗い出すことが大切です。ここで洗い出した関係者は、業務プロセス図のスイムレーンにそれぞれ適宜追加しましょう。
3.作業の洗い出し
そして、実際に関係者にヒアリングしながら作業やタスクを洗い出し、リスト化していきます。ただし、作業やタスクを洗い出しながら、同時に業務プロセス図を作成することはおすすめできません。
途中で抜け漏れがあった場合、業務プロセス図もあわせて修正しなければならず、修正の手間が増えてしまうでしょう。まずは作業やタスクををすべて洗い出したうえで、業務プロセスを把握し、業務プロセス図を作成することが大切です。
また、作業やタスクを洗い出す際には、あまりに細かい粒度で洗い出そうとするとそれだけで時間もかかってしまいます。細かい修正は後でいくらでもできるため、まずは細かすぎない程度に洗い出して、業務プロセス図を一度完成させるようにしましょう。
4.業務プロセス図の作成
すべての作業やタスクが洗い出せたら、実際の業務の流れに従って時系列順に並べます。そして各業務プロセスにあわせた記号を用いながら業務やタスクを矢印でつなぎ、業務プロセス図を作成します。
業務やタスクの洗い出しが適切であれば、業務プロセス図の作成は比較的短時間で完了するでしょう。
5.詳細の追加・フィードバック
業務プロセス図が完成したら、メンバーと共有してフィードバックをもらいましょう。業務プロセス図に抜け漏れがないか、適切かなど、メンバー間で最終チェックを行い、必要に応じて追加すれば、より正確な業務プロセス図になります。
また、実際に業務を進めてみると、「このプロセスは不要ではないか」「ここには○○というプロセスが必要な気がする」など、改善点が出てくることがあります。そのため、定期的に業務プロセス図の見直し・改善を行うことも大切です。
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業務プロセス図を作成する際のポイント
作成した業務プロセス図を見ると、矢印が絡み合っていたり、記号が多すぎて複雑になってしまい、分かりづらい、使いづらい業務プロセス図になってしまう可能性もあります。
誰が見ても業務プロセスがわかるように、業務プロセス図を作成する際には以下4つのポイントに注意して作成しましょう。
- 開始時点や終了時点を明確にする
- 時系列を意識して記号を活用する
- 記号はあまり多く使用しない
- 条件分岐では分岐先を明確に記載する
開始時点や終了時点を明確にする
業務プロセスの「開始時点」と「終了時点」は、それぞれ1つで、かつ明確にすることが大切です。開始/終了時点が複数あると、「どこから始めればよいか」「どこまで終われば業務の完了か」など、業務プロセスが曖昧になってしまうので注意しましょう。
時系列を意識して記号を配置する
業務プロセス図では、業務内容と記号が適切かだけでなく、「実際の業務の流れと合っているか」という業務プロセスの時系列を意識することが大切です。
業務内容と記号が正しくても、時系列がバラバラでは、業務プロセス図を見たところで、業務の流れを把握できません。業務プロセス図を作成する際は、時系列を意識しながら適切な記号を配置しましょう。
記号はあまり多く使用しない
業務プロセスの複雑さによりますが、できる限り業務プロセス図に使う記号の数は多用せず少なくしましょう。最大でも15個程度が見やすく適切だと言われています。
条件分岐では分岐先を明確に記載する
条件分岐を使用する際は、分岐先がどの業務プロセスにつながるかを明確に記載することが大切です。例えば、条件分岐で「Yes」と「No」で業務プロセスが異なるにもかかわらず、「Yes」の先しか記載されておらず、「No」の先が記載されていないとなれば業務は滞ってしまいます。
条件分岐を使用する場合は、どちらの条件になっても業務が滞らないよう、分岐先を明確に記載しましょう。
また、処理の記号で条件分岐を表す場合もありますが、処理の記号の数が増えて業務プロセスが分かりづらくなるため、意思決定をする場合には条件分岐の記号を使うようにしましょう。
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業務プロセス図の作成におすすめのツール
次に、業務プロセス図の作成におすすめのツールを3つ紹介します。
Lucidchart
Lucidchartは、業務プロセスの可視化をはじめ、さまざまな図表の作成や情報共有などの機がも搭載されたツールです。直感的でシンプルに使えるUIで、メンバー間とリアルタイムで同時編集も可能なため、スムーズに業務プロセス図が作成できます。デバイスやブラウザなどに関係なく利用できるため、テレワークにも最適です。
提供元 | Lucid Software Inc. |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | フリー:無料 Individual:900円/月 Team:1,100円/1ユーザー 法人向け:要問い合わせ |
導入企業数 | 2,500万人以上 |
機能・特徴 | フローチャートツール、回路図ソフト、相関図作成メーカー、UML作成ツール、ERD作成ツール、マインドマップツール、Visio代替ソフト、業務フローツールなど |
URL | 公式サイト |
CaCoo
CaCooは、業務プロセス以外にもあらゆるシーンの作図・共有に役立つツールです。100種類以上のテンプレートと図形から、カスタマージャーニーマップ・組織図・オフィスレイアウトなど、さまざまな図を作成できます。
また、メンバーとリアルタイムで共同編集やフィードバックができ、かつさまざまな共有方法を選択できる点も魅力です。
提供元 | 株式会社ヌーラボ |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | フリー:無料 月払い 年払い ※チームプランは、3ユーザー以上。 |
導入企業数 | 1万社以上 |
機能・特徴 | シート数無制限、豊富なテンプレート、簡単共有、ビデオ通話コメント、エクスポート、外部サービス連携、サイトへの図の埋め込み、プレゼンテーション、変更履歴保存、2段階認証など |
URL | 公式サイト |
Edraw Max
Edraw Maxは、作図や製図業務に特化したツールです。幅広い業界での導入実績を持ち、各業界に特化した図形やテンプレート、280種以上のダイアグラムを搭載しているので、短時間で思った通りの作図・製図が完成できるのが特徴です。直感的なUIなので、操作についても使いやすいのも魅力です。
提供元 | 株式会社ワンダーシェアーソフトウェア |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 個人向け
チーム向け
学生・教職員向け
|
機能・特徴 | 作図、製図、インポート&エクスポート、テンプレート、直感的な操作、ワンクリックエクスポート、チャート&グラフなど |
URL | 公式サイト |
業務プロセス図を作成して業務を可視化していこう
業務プロセス図を作成することで、業務内容を可視化できます。業務内容が可視化されれば、円滑な情報共有や業務の効率化・改善などのメリットを得られるでしょう。
ただ、業務プロセス図は誰にでも分かるように作成する必要があるため、決められた統一の記号を使って、見やすく作成することが重要です。本記事における業務プロセス図の作り方などを参考に業務プロセス図を作成して業務を可視化し、より業務の効率化や改善などを図っていきましょう。
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