シナリオ型チャットボットとは?仕組みや導入事例・メリットを紹介
ユーザーからの問い合わせに自動対応するチャットボットは、主にシナリオ型・AI型の2種類があります。なかでも、シナリオ型チャットボットにはどのような特徴があるのでしょうか。本記事では、シナリオ型チャットボットの概要や仕組み、導入メリットを事例とあわせて紹介します。
目次
シナリオ型チャットボットとは?
シナリオ型チャットボットは、事前に設定した質問と回答(シナリオ)を、ユーザーの質問に応じて提供するシステムです。主に企業のウェブサイトに設置され、訪問者からの一般的な質問に対して、選択肢を提示し適切な回答を案内します。
シナリオ型チャットボットは、AI搭載型チャットボットに比べて、ユーザーが入力する自由な質問に会話のように対応することはできないため、問い合わせ内容がある程度決まっているECサイトなどに適しています。
特に「パスワードを忘れた」「支払い方法について」などの、よくある質問の回答を迅速に提供する場面においては、非常に有効です。
シナリオ型チャットボットの仕組み
シナリオ型チャットボットは、「質問」と「回答」をあらかじめ設定されたシナリオで進めるシステムです。
例えば、「商品の使い方」「返品交換」「お支払い」「配送」「その他」などの項目が表示された場合、「配送」を選んだユーザーには、配送に関する次の質問項目が表示され、そのなかから「配送料について」を選んだ際には、配送料に関する情報が表示され、「配送日の変更」を選んだユーザーには、配送日変更の方法が表示されるといった仕組みです。
ユーザーの選択に応じて異なる回答ルートに進むプログラムは、「樹形図」や「フローチャート」をイメージするとわかりやすいでしょう。
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シナリオ型とAI型の違いとは?
AI型とは、人工知能を使用してユーザーの質問の意図を理解し、その場で適切な回答を生成するチャットボットです。シナリオ型と比べて、より自然な会話が行えることが特徴です。
シナリオ型は、事前に設定したシナリオにない回答はできませんが、AI型は、より自由で複雑な質問に対しても、検索エンジンなどにも使われる自然言語処理(NLP)の技術によって、最適だと思われる回答を提供することができます。
どちらもウェブサイトにおける顧客サポートに有効ですが、目的に合わせて選択することが重要です。
シナリオ型チャットボット導入のメリット
シナリオ型チャットボット導入により、迅速な顧客対応、コスト削減、運用のシンプルさが実現します。ここからは、シナリオ型チャットボット導入のメリットを紹介します。
AI型と比べて費用が安い
AI型チャットボットに比べて、シナリオ型チャットボットは導入と運用のコストが低い傾向があります。たとえば、初期費用は、AI型が20万円以上かかるのに比べ、シナリオ型は0〜5万円程度で収まるのが一般的です。
また、AI型は膨大なデータベースと継続的なデータ分析が必要ですが、シナリオ型は簡単な質問と回答の設定から運用を始めることも可能です。そのため、特に予算や人手などのリソースに限りがある小規模な企業やスタートアップにとっては導入しやすいでしょう。
簡単に実装できる
シナリオ型チャットボットはシンプルな構造なため、企業のウェブサイトや顧客対応システムに簡単に実装できます。
専門的なプログラミングスキルや深いIT知識がなくても、事前に定められた質問と回答のシナリオを設定するだけで運用を開始できる手軽さは、IT人材が不足しがちな中小企業や、迅速なデジタル化を求める組織にとって大きな利点です。
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チャットボットのシナリオ作成の手順
シナリオ型のチャットボットの有効性を高める上で、ユーザーのニーズを理解したシナリオ作成は、特に重要なプロセスとなります。
シナリオの作成手順を確認していきましょう。
導入目的を明確にする
チャットボットのシナリオを作成する前に、導入の目的を明確にしておきます。
一般的な導入目的は、顧客サービスの向上、問い合わせ対応業務の負担削減などが挙げられます。目的は、シナリオとして用意すべき質問と回答を決定する基準にもなるため、認識に齟齬が生じないよう明確に言語化し、関係者全員に共有しましょう。
ターゲット・ペルソナを設定する
シナリオ型チャットボットの効果を最大化するためには、ターゲットとなるユーザー像(ペルソナ)を明確に設定することが重要です。ペルソナとは、チャットボットを利用するユーザーの具体的な人物像のことで、年齢、性別、職業、興味・関心などを含みます。
ペルソナを設定することで、ユーザーのニーズや行動パターンを予測しやすくなり、チャットボットの目的である「ユーザーが簡単に求める情報を得られるようになる」役割を果たすことができます。
質問・回答を考える
次に、チャットボットに設定する質問・回答を考えましょう。
ユーザーから寄せられる、よくある質問や問い合わせを想定し、わかりやすい回答を用意します。質問文に含める言葉には、ユーザーのニーズを反映するようにし、回答は、専門用語や特殊用語を使用しない簡潔でわかりやすい内容にまとめるのがポイントです。
すでにFAQがある場合は、その質問と回答をチャットボットに設定するのもよいでしょう。FAQがない場合は、過去にサポート窓口などへ寄せられた質問や問い合わせを分析し、質問と回答をリストアップしていきます。
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シナリオの骨組みを設計する
シナリオの骨組みを設計する際は、質問と回答がどのように連鎖して流れるかを決定します。フローチャートなどを使用しながら、整理していくと、全体像が理解しやすくなります。まずは質問を大きなカテゴリーごとに分けて、そのあとに細かくカテゴリー分けをしていきましょう。
例えば、料金に関する質問なら「大:料金について知りたい>中:月額費用について知りたい>小:支払い方法を知りたい」というようにカテゴリー分けして、最終的にユーザーが一番知りたい質問に辿り着けるようにします。
ユーザーが、欲しい情報をすぐ得られれば、チャットボットへの満足度が高まり、欲しい情報へ辿り着けなければ、満足度は下がることになります。シナリオの骨組みは、いわばユーザーが求める回答へと辿り着くための道筋のようなものであり、シナリオによって「最短」かつ「的確」にユーザーを回答へと導く必要があるのです。
チャットボットへの実装・運用テストを行う
シナリオの設計が完了したら、チャットボットに実装して運用テストに移り、テスト段階ではシナリオが実際にユーザーの質問に対して適切に機能するかを確認します。
たとえば、シナリオの骨組みや回答内容に不自然な点はないか、難しい専門用語を使っていないか、不足している情報はないかなどの項目を丁寧に見ていきます。問題点や改善の余地が見つかれば、それに応じてシナリオを調整しましょう。
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シナリオ型チャットボットの導入事例
最後に、シナリオ型チャットボットの導入事例を紹介します。チャットボット導入による効果と、実際の運用方法を詳しく見ていきましょう。
株式会社東京ソワール
株式会社東京ソワールは、レディースフォーマルウェアの製造・販売とアクセサリー類の販売を手掛ける企業です。2007年に立ち上げた、ECサイト「FORMAL MESSAGE」へのシナリオ型チャットボットの導入は、ECサイトにおける購入促進や接客レベルを向上させるための重要な戦略でした。
同社では、商品診断と、問い合わせの多い試着サービスに関する問い合わせ対応にチャットボットを活用。顧客の要望にあった最適な商品の提案やよくある質問の初期対応を行っています。
チャットボット導入後は、ECサイト全体の購入率が昨年同月比で132%に向上し、サイト内滞在時間は120%、セット購入率も105%に増加するなど、売上の増加にもつながったといいます。
[参照元:SYNALIO「店舗の接客をチャットボットで実現!商品購入前の不安を払拭しECサイトの購入率132%UP」]
freee株式会社
freee株式会社は、SaaS型クラウドサービスを提供する企業で、購入促進や業務効率化のためにチャットボットを活用しています。
同社では、従来は担当者による電話でのヒアリングをもとに行なっていた、「会計freee」のプラン診断にチャットボットを導入。チャットボットを活用することにより、新規登録数、課金率、上位プラン率の指標を改善しています。
[参照元:株式会社PRTIMES「クラウドサービスの展開を行うfreeeがAI対話エンジン「PKSHA Chatbot」を導入」]
日本生活協同組合連合会
日本生活協同組合連合会は、消費生活協同組合法に基づき、全国の生協の連合会として、さまざまな社会活動を行っています。
同団体では、通販サイト「くらしと生協」とLINE公式アカウントにチャットボットを導入しました。導入の主な目的は、電話での問い合わせを面倒と思う顧客が離れてしまうことを防ぎ、時間を気にせず気軽に質問できる環境を整えることです。
その後、ウェブサイトにもチャットボットを展開。電話による問い合わせ件数が減った上に、デジタル媒体に慣れたユーザーにとっては、よりアクセスしやすい手段の提供となるなど、組織の業務効率化とユーザーエクスペリエンス向上の両方を実現しています。
結果として、問い合わせ解決率は、チャットボットの導入により68%から81%に上昇。ユーザーがチャットボットに慣れることでさらなる利用拡大が期待されています。
[参照元:SYNALIO「約300パターンの会話で疑問を解決!FAQ解決率が10%以上アップ!」]
シナリオ型チャットボットを導入しよう
シナリオ型チャットボットの導入は、迅速な顧客サポート、コスト削減、そして簡単な運用管理を実現します。
多様な業種での成功事例が証明するように、シナリオ型チャットボットは幅広いビジネスモデルに適応可能です。シナリオ型チャットボットを導入して、業務効率化や売上の増加、顧客満足度の向上を目指しましょう
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