CRM戦略とは?導入メリットや戦略立案の方法・具体的な進め方を解説!
昨今のビジネスにおいて重要視されているCRM戦略とは、どのようなものでしょうか。本記事では、CRM戦略が重要な理由やCRM戦略のメリット、具体的な戦略立案の進め方を解説します。CRM戦略の成功事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
CRM戦略とは
CRM(Customer Relationship Management)戦略とは、顧客との関係性を維持・管理して安定した売上の維持や収益向上を図る戦略のことです。CRMは日本語で「顧客関係管理」と呼びます。
CRMとは、顧客と自社の関係構築に注目し、良好な関係を築くことで継続的な取引を図る考え方です。この考え方に基づいて戦略を練っていくことを「CRM戦略」といいます。
CRM戦略の一例として、企業は次のような接点を通じて顧客との関係構築を図ります。
- オンラインショッピング
- チャットによるカスタマーサポート
- メール登録フォーム
- SNSプラットフォーム
Webサイトから収集したデータは、CRMツールに蓄積して分析することで、顧客行動の把握が可能です。
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CRM戦略が重要な理由
CRM戦略が重要な理由として、消費者行動の変化や競合他社との差別化が難しくなっていることなどがあげられます。ここからは、それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
消費者の行動が変化しているから
最近ではインターネットの利用が普及し、店舗に出向いて商品やサービスを購入するだけではなく、アプリやECサイトなどで完結する人が増えています。
消費者の行動やニーズが多様化している現代では、消費者一人ひとりの行動傾向やニーズを分析して、より顧客満足度が高められる施策を行うことが重要です。
そこで従来のマーケティング戦略だけではなくCRM戦略も取り入れることで、消費者のニーズを正確に分析して個人ごとに合ったアプローチが行えるようになります。
競合他社との差別化が難しくなっているから
現代は市場が成熟しており、商品やサービスの品質だけで競合他社との差別化を図ることが難しくなっています。そのため、新規顧客に加えてリピーターやファンの獲得が重要です。
品質や価格などで差別化を図ることが難しい場合でも、リピーターやファンとの間で構築された関係性は自社独自の強みとなります。CRM戦略を実施することで、リピーターやファンの獲得に向けた顧客との関係性の構築や、顧客エンゲージメントの向上が行えます。
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CRM戦略を実施するメリット
CRM戦略を実施することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここからは、CRM戦略を実施するメリットを4つ紹介します。
顧客の潜在的ニーズを見つけられる
ユーザーが抱えるニーズには、顕在ニーズと潜在ニーズの2種類が存在します。
顕在ニーズとは、顧客自身が認識しているニーズのことです。「お腹が空いているから、何か食べたい」「疲れているから、マッサージ店へ行きたい」といったものが、顕在ニーズに該当します。
何が必要なのかを顧客が自覚しているため、企業側がニーズを満たす提案をすれば、それが顧客の購買行動へとつながります。
一方、潜在ニーズとは、ユーザーが自覚していない欲求です。心の奥底にあるものの、それが必要なものだと顧客が気づいていない状態を指します。
例えば、「仕事の生産性を高めたい」という思いに対する潜在ニーズは、「疲れにくい椅子がほしい」であったり「タスク管理に優れたクラウドサービスを使ってみたい」であったりします。
こうした潜在ニーズを企業が理解するのは困難です。そこで必要になるのが、CMR戦略を通じた顧客へのアプローチです。CRM戦略では、顧客の購買データや行動分析などを行うため、顧客の潜在ニーズを探るのに役立ちます。
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顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供できる
最近では個人の好みの多様化が進んでいることから、画一的な商品やサービスを顧客へ提案しても、購買に至らないケースがあります。効果的なマーケティングを展開していくためには、顧客一人ひとりの好みに寄り添ったアプローチが重要です。
CRM戦略を実施すれば、顧客の購買履歴や属性などに基づいた商品・サービスの提案が図れます。既存顧客が契約中のサービスをあまり利用していない状況だとしたら、使い方に関するセミナーへ招待したり、上位版のサービスプランを提案したりすることが可能です。
顧客の現在の状況やニーズを可視化してくれるCRM戦略を導入することで、それぞれの顧客に最適化したマーケティング施策を展開できるでしょう。
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顧客サポートが的確にできるため、顧客満足度が高まる
顧客情報を一元管理することで、顧客の要望や悩みに素早く対応できるのがCRM戦略のメリットです。
CRMツールには過去の購入履歴や問い合わせ内容がデータとして蓄積されているため、社員間で顧客情報を共有できます。問い合わせ頻度の多い内容がある場合には、マニュアルを用意して顧客へ配布したり、よくある質問としてWebサイト上に掲載したりする取り組みも効果的です。
CRM戦略を実施していけば、カスタマーサポートの品質向上も図れるため、顧客満足度の向上が期待できます。
データドリブンな経営ができる
データドリブンとは、収集した顧客情報を基に意思決定を下すことです。CRM戦略では顧客データの一元管理が図れるため、蓄積したデータを分析することで効果的なマーケティング施策や事業戦略を立てられます。
顧客行動が複雑になった現代では、従来のような勘や経験による状況判断や意思決定では、市場の動きに対応することは難しくなりました。また、既存顧客へ適切なマーケティング施策を実施するうえで、過去の購入履歴や属性情報の把握は欠かせません。
データドリブンな経営を実践していくことで、精度の高い顧客アプローチや意思決定が実現できるでしょう。
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CRM戦略立案の進め方
CRM戦略立案を進めるには、ビジョン・目標設定やターゲット顧客の決定など、さまざまなステップを踏む必要があります。ここからは、CRM戦略の具体的な進め方について見ていきましょう。
ビジョン・目標設定
まずは行動方針を明確にするために、ビジョンや目標設定を行います。抽象的な目標ではCRM戦略実施による効果も半減してしまうため、できるだけ具体的な目標設定を心がけましょう。
具体的なビジョン・目標設定の例としては、「売上を2倍アップする」「既存顧客をリピーターにする」などがあげられます。
目標設定の際は、自社が達成したいことを明らかにすると共に、目標達成に必要なアクションを固めます。また、全社一丸となって目標達成を図るためにも、部署間の連携や情報共有の体制を整えておくことも重要です。
ターゲット顧客の決定
ビジョンや目標の設定ができたら、次はターゲットとなる顧客層を特定していきます。精度の高いターゲット分析を図るためには、CRMツールの活用がおすすめです。
既存顧客の年齢・居住地域・性別・Webサイト上の行動傾向などを分析することで、具体的なターゲット層が見えてきます。分析結果から、ターゲット層の年齢や性別、居住地や家族構成、行動傾向などの人物像を明確にしていきましょう。
ターゲット層は、新規顧客と既存顧客に分けて整理しておくと、それぞれに必要なマーケット施策を立てやすくなります。
カスタマージャーニーマップを作成
カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客が商品やサービスを購入し、顧客となるまでのプロセスをまとめる手法です。
商品購入に至るまで、顧客の心理状態は大きく変化します。
例えば、最初に商品を見た時には「これはなんだろう?」と認知し、詳細を知るにつれて興味や理解が深まっていきます。購入意欲が高まってくると「買おうかな?」と検討段階に入り、購入によって「買えてよかった」と満足した気持ちになるのです。
カスタマージャーニーマップは、購買プロセスの間に顧客がとる思考や行動を想像して整理します。完璧に顧客心理を予測することは不可能ですが、CRMツールなどで収集したデータを活用し、精度の高い仮説を立てる取り組みが重要です。
顧客体験(CX)がよくなるようなビジネスプロセスを設計
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、「顧客体験価値」を意味する言葉です。商品そのものの価値だけでなく、購買に至るまでに顧客が得た体験やメリットなどを含めてCXと呼びます。
CXの向上を試みる場合、意識したいのは顧客の感覚や心理に与える価値です。
例えば、同じ品質のコーヒーを提供する2つのカフェがあったとしましょう。味のレベルに差がなくても、お店の雰囲気・店員の接客態度・アクセスしやすさなどに差があれば、顧客の抱く印象はまったく異なります。
このように、顧客の心理や感覚に影響を与える要素を把握し、購買に至るプロセスを気持ちよく体験してもらえる仕組みを作っていきましょう。
KPI設定をする
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では重要経営指標という意味の言葉です。
目標達成に必要な道しるべのようなもので、例えば最終的な目標が「売上30%アップ」の場合、KPIは「商談数を月30回増やす」「成約率を20%アップする」といったものになります。KPIとして設定されることの多い指標は、以下のとおりです。
- 受注金額
- 受注期間
- 顧客数
- リピーター率
- タッチポイント数
- 商談数
- ユーザー単価
KPI設定後は、常に成果を確認しながらCRM戦略を進めることで、ゴールとの差が可視化できます。過去の購買履歴や売上データから分析し、具体的かつ現実的なKPIを設定するよう心がけてください。
CRM戦略の成功事例
ここでは、CRM戦略に成功した3社の事例を紹介します。
沖縄ツーリスト株式会社
沖縄ツーリスト株式会社は、沖縄旅行を専門とする旅行プランの提供を行う旅行会社です。
同社では、広告展開を中心に新規顧客を獲得して売上を伸ばしていましたが、近年の国内旅行者の減少や若者の旅行離れなどの影響で、売上を伸ばし続けることに限界を感じていました。
そこで広告展開以外に自社のファンを増やす施策が重要だと考え、CRMプロジェクトを立ち上げて顧客データの分析を行い、顧客の固定客化やリピート促進といった取り組みを始めました。
結果的にキャンペーン施策に多くの顧客から反響があり、販売促進や顧客との関係性構築に成功しています。具体的には、CRM施策の一つとしてキャンペーンに関するメールマガジンの配信を数万人に対して行い、約10%もの顧客がキャンペーン応募に至りました。
今後もDMPを用いた施策が予定されており、さらなるCRM戦略の効果が期待されています。
[出典:シナジーマーケティング株式会社「DMP活用を見据えたCRMプロジェクトの立ち上げで「沖縄旅行といえば沖縄ツーリスト」を目指す」]
株式会社ヤクルト球団
株式会社ヤクルト球団は、プロ野球チームの東京ヤクルトスワローズを運営する企業です。
同社は歴史が古い球団でありながら、他球団に比べてファンクラブの運営は小規模に止まっていて、いかに事業として黒字収益を上げていくかを課題としていました。
そこで、年会費を支払って会員になる顧客を増やすことに集中し、継続して会員になる固定客の獲得にも力を入れることにしました。
CRM戦略として、当初は懐疑的であったメールマーケティングに力を入れて実施し、開封率、クリック率、コンバージョンともに大きな数字を出すことに成功しています。
顧客へのアンケートや商品販売の案内を送信することで大きな反響があり、結果的に会員数も右肩上がりで増加しているうえに黒字収益も達成しました。今度も新規顧客の獲得やさらなる収益の向上に向けて、さまざまなCRM戦略の実施を予定しています。
[出典:シナジーマーケティング株式会社「ファンクラブ事業の黒字収益のポイントは「仮説検証」と「判断軸」」]
株式会社エスクリ
株式会社エスクリは、全国で27の結婚式場やゲストハウスなどの施設を運営するブライダル企業です。
スタッフの高い提案力・接客力を持ち、ブライダル業界では初のDX認定事業者となるなど最先端を走り続ける同社は、顧客満足度の定量化を図るためにCRM戦略を実施していくことにしました。
具体的には、アンケートツールとしてCRMを導入し新郎新婦の感想・意見の収集や分析をして、結婚式当日までの複数回にわたる接客がどのタイミングでも高い満足度を得られる品質であるかの計測を行いました。
結果を基に改善案の立案やナレッジ共有などを行い、結果的に社員の顧客満足度に対する意識も大きく向上して、現在では顧客満足度の数値が90%を超える高い水準を維持しています。
今後も結婚式を挙げて顧客との関係性が切れるのではなく、長く寄り添っていける関係を構築するためにさまざまなCRM戦略の実施が予定されています。
[出典:シナジーマーケティング株式会社「高いスタッフ力・顧客満足度の定着を実現したアンケート施策。ブライダルのリーディングカンパニーが15年間継続利用する理由とは?」]
CRM戦略を実践して効果的なマーケティングを
CRM戦略を実施することで、顧客の潜在的なニーズを見つけられたり、データに基づいたマーケティング施策を展開したりできます。
CRM戦略を立てる際は、ビジョンや目標を設定したうえで、ターゲット顧客の決定とカスタマージャーニーマップの作成を行いましょう。また、購買に至るまでのプロセスを最適化し、顧客体験の向上を目指すことも重要なポイントです。
効果的なCRM戦略を実施し、自社のマーケティング成果の向上を図っていきましょう。
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