経費精算でよくある不正事例とは?不正を放置するリスクや検知・防止に効果的な方法も解説
経理担当者の中には、経費精算の不正を発見した経験がある方もいるのではないでしょうか。しかし、不正を発見した場合や不正防止の対策をどのように行えばよいかお困りの方も多いはずです。本記事では、経費精算の不正事例や理由、不正を発見した際の対処フローなどを詳しく解説します。
目次
起こりがちな経費精算の不正事例
多くの企業の経理担当者が頭を悩ませる経費精算の不正をなくすためにも、まずはどのような事例があるのかを確認しておきましょう。気をつけるべき場面を、具体例をあげて解説していきます。
交通費や通勤手当を水増し請求する
交通費や通勤手当の水増し請求は、経費精算の不正でよくある事例です。
例えば、実際の出勤経路とは別の経路で申請して経費を水増ししたり、出張時に移動した手段とは別の経路での費用を申請したりするなど、さまざまなケースが考えられます。
私的な移動手段を経費として水増し請求するケースもあるため、管理側は十分に注意しておく必要があります。
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領収書の金額を改ざんする
領収書に記載された金額の改ざんも、注意が必要な不正行為です。特に手書きの領収書の場合は、数字を書き足して水増し請求される恐れがあるため注意しましょう。
例えば、取引先の接待で飲食店から7,000円の領収書を受け取り、数字を書き足し17,000円で申請する行為などがあげられます。ほかにも、取引先から金額と日付を記入していない領収書をもらって、実際より多い金額を自分で記入して申請する行為なども不正にあたります。
領収書は店名や会社名が記載された正式なものが使用されるため、不正を見極めるのが難しいのです。
領収書の重複請求を行う
あらかじめ領収書のコピーを作り、日付を改ざんして同じ領収書で何度も申請される場合があります。
例えば、接待の際に飲食店から受け取った領収書を提出前にコピーしておき、後日接待していないにもかかわらずコピーの日付だけを変更して再度申請されると、気づかずに承認してしまうケースもあるでしょう。
金額の改ざんと同様に、手書きの領収書で起こりやすい傾向にあります。
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架空の出張代を請求する
出張していないのにもかかわらず、交通費や宿泊費などを申請される場合があります。この行為は架空の出張代の請求にあたり、「カラ出張」とも呼ばれています。
出張による不正は、普段から出張の機会が多い営業部などで起こるケースが多いです。また、交通系ICカードの利用履歴や領収書などのチェック体制が整っていない場合にも起こりやすいでしょう。
社用携帯を私的に使用する
会社から支給された携帯電話やスマホの私的利用も、経費精算の不正行為につながります。
例えば、会社から支給されたスマホで動画サイトを閲覧したり、会社支給の携帯電話で家族や友人と長時間通話したりする行為は不正にあたります。
携帯電話やスマホは、業務で利用するために支給されるものです。私的な通話やインターネット閲覧などに使った場合、通話料や通信費を会社に負担させることになり、不正と判断されます。
私的に使う物を経費で購入する
経費として精算できるのは、業務に必要な物を購入する場合に限られるため、私的に使う物を経費で購入するのは不正行為です。
例えば、私的に使用する靴やそのほかの消耗品などを経費で購入する行為が事例としてあげられます。特に備品や消耗品などは金額が大きくないため不正に気づかない場合が多く、見逃されてしまいがちです。
特に不正が発生しやすい経費の種類
経費にはさまざまな種類がありますが、特に不正が発生しやすいものがあります。ここからは、不正が発生しやすい3種類の経費を詳しく紹介します。
接待交際費
私的な飲食代を接待と称して、接待交際費で経費申請するのは非常に多い不正行為の一つです。
この場合は故意に経費申請しているため、発覚した場合にはしっかりと事情をヒアリングして注意・処分する必要があります。
交通費
出張時や取引先への営業時の交通費なども不正精算が多い経費といえます。
実際の経路とは別の経路で申請して経費を水増ししたり、出張時に移動した手段とは別の費用を申請したりとさまざまなケースが考えられます。
私的な移動手段を経費として申請するケースもあるため、管理側は十分に注意しておく必要があるでしょう。
通勤手当
通勤手当も不正が発覚しやすい経費の一つです。
例えば、会社までのルートの中で交通費が高い経路で申請して実際は安い方法で移動していたり、会社の近くに引っ越したことを報告せず引越し前の通勤手当をもらい続けていたりする不正が行われる場合があります。
通勤手当の不正請求を防ぐには、定期的な経路の見直しや申請時の詳細確認などが欠かせません。
経費精算で不正が起こる理由
経費精算の不正は、どのような理由で起こってしまうのでしょうか。ここからは、不正が起こる理由を3つ紹介します。
社内のチェック体制が不十分だから
経費精算の不正を防ぐには、経理担当者のチェックが不可欠です。しかし、経理部門の人員が不足している企業も多くあります。
人員が不足していると一人に対する負担が大きくなり、不正のチェックが追いつきません。その結果、経費の不正申請を見落としてしまうのです。
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社員が故意に得をしようとしたから
経費のチェック機能や承認体制に不備があると、「不正をしてもバレない」と考えて故意に得をしようとする社員が出てきてしまうケースがあります。
経費の申請は会社によってルールを定めてはいるものの、最終的には個人の良心にゆだねられている側面も強いです。そのため、つい魔が差してしまうというケースも少なくありません。
社員の無知・書類の不備などによる申請ミスがあったから
社員が経費の申請をするとき、単純に数字を書き間違えたり、経費の範囲を勘違いしていたりすることもあります。
ミスが修正されないまま申請が承認されてしまい、結果的に不正になるケースも少なくありません。社内の承認フローやチェック体制に問題があると、申請ミスによる不正が起こる可能性が高くなります。
経費精算の不正を検知・防止するには?
経費精算の不正は、さまざまな原因によって起こります。それでは、不正を検知・防止するにはどうすればよいのでしょうか。ここからは、効果的な5つの対策を紹介します。
接待交際費を事前申請にする
取引先との予定が決まった段階で、接待交際費を事前に申請させる方法です。
前もって「いつ・どこで・誰と・何の目的で」会うのかを申請させることで、個人的に使用した領収書を接待交際費として紛れ込ませることを防ぎます。
また、接待に使うお店を事前に報告させ、おおよその料金を把握したり会社から直接支払ったりするのも効果的です。
交通系ICカードの履歴を提出してもらう
交通系ICカードの履歴の提出は、交通費の水増し請求や架空の出張代の請求防止に効果的です。
交通系ICカードには、利用した日時、区間などがすべて記録されています。そのため、申請されたルートで通勤しているか、本当に出張をしているかの確認が可能です。
また、経費精算システムとの連携で、交通費と履歴を自動記録するのも不正防止につながります。
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社内のチェック体制・フローを強化する
経費精算は件数が多いこともあり、経理担当者が承認からチェックまで行うと大きな負担になります。この状態が不正を見逃す原因にもなっているのです。
そのため、各部署に承認者を立て、申請前に確認するというフローを作るようにしましょう。特に交通費や出張日の場合は何のための交通費なのか、出張先はどこかなどを事前に承認者へ申請させて、確認を取ってから経費精算を行う方法が有効です。
経理への申請前に現場で確認ができれば、不正が起こるリスクは大幅に減少できます。経理担当者も負担が減るため、細かなチェックが可能になるのです。
経費承認者・経理担当者を定期的に配置換えする
経費承認者・経理担当者の定期的な配置換えも、有効な手段の一つです。
一部の担当者のみに経費精算の権限が集中していると、故意に不正を見逃したり自身で不正を行ったりするリスクが高くなります。特に金額が小さい消耗品や備品などの経費申請や、実際に使用したかを確認しづらい交通費や出張費は不正が起こりやすくなるでしょう。
経費承認者・経理担当者を定期的に配置換えすることで、内部統制を強化して消耗品費や交通費、出張費などの不正を防止できます。
経費精算システムを導入する
効率的に不正を防ぐ方法が、経費精算システムの導入です。経費精算システムには不正を検知する機能が備わっており、すべての経費における不正を予防する効果が期待できます。
例えば、過去の申請データと新規の申請データを自動で比較して、少しでも差異があればアラートを出して不正の確認を促してもらえます。
また、スマホから領収書を撮影して自動的に経費精算の申請ができるシステムであれば、手作業で数字を入力する必要がないためミスによる不正行為も防止可能です。
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経費精算の不正を放置するリスク
経費精算の不正は、会社にさまざまな悪影響を及ぼします。不正に気づかずに放置してしまうと、どのようなリスクがあるのかを認識しておきましょう。
社の利益を正しく算出できない
経費精算の不正を放置してしまうと、会社の正しい利益が把握できなくなります。不正に申請された経費を支払うことは、会社の利益を減らすことと同じ行為です。
一度の不正による金額は小さくとも、人数や回数が増えれば大きな金額になってしまいます。そのため、会社の正しい利益が出せなくなってしまうのです。
さらに、会社の決算内容や事業計画にも影響が及ぶ可能性があるため、正しい経費の金額を把握することは非常に重要です。
社員のモチベーション低下を招く
社内で不正が常態化していると、社員同士がお互いを信用できず「不正を行っているのではないか」と疑ってしまい、信頼関係が築けない恐れがあります。
信頼関係が築けない職場では業務に対するモチベーションも低下してしまい、結果的に生産性の低下や業績の悪化などが生じる場合もあるでしょう。
顧客からの信用低下につながる
経費精算の不正が発覚すれば、テレビやネット上でニュースとして報道される恐れがあります。報道によって顧客に不正行為の事実が広まると、信用低下につながる点が大きなリスクです。
信用が低下すると、顧客が離れたり取引を停止されてしまったりする可能性があります。また、優秀な人材の確保も難しくなる恐れもあるため、最終的に業績の悪化にもつながりかねません。
企業のブランディング力・社会的信用が失われる
有名企業での不正発覚や、中小企業でも不正額が大きい場合は、メディアで報道されることがあります。これにより、企業のブランディングや社会的信頼性が大きく低下するリスクがある点に注意が必要です。
ブランディングの低下は、取引先との関係悪化や顧客離れにつながります。また、社員同士の信頼関係が悪化し、社内の雰囲気が悪くなる恐れもあるため絶対に避けなければなりません。
脱税とみなされる恐れがある
会社が納める法人税は、売上から経費を差し引いた金額に対して課せられます。
そのため、経費の不正によって課税対象となる金額が減ってしまうと、法人税を下げるため故意に虚偽の報告をしているとみなされる可能性があるのです。
たとえ社員の不正が原因であったとしても、税務署が脱税と判断した場合は、会社が罰則の対象になります。
経費精算の不正を発見したときの対処フロー
最後に、経費精算の不正を発見したときの対処フローをお伝えします。適切な手順で対応しなければ取り逃がしや不正の再発につながるため、十分に理解を深めておきましょう。
①事実調査・証拠の確保
不正の疑いを発見したら、まずは事実をしっかりと調査することが大切です。
不正が確定していない段階で、社員を問いただすのは避けてください。 万が一冤罪であれば逆に会社側が訴えられてしまう可能性もあります。
焦らずに、再度計算をし直し、提出書類が正しいかを確認しましょう。不正の可能性が高い場合は、不正を裏付けるための証拠の確保も必要です。
証拠が不十分となれば不正が認められず、仮に社員へ解雇などの処分を下していたとしても無効となったり不当な処罰と判断されたりする恐れがあります。
②故意か過失かの判断
次に、今回の不正行為は故意か過失かを判断します。
勝手な思い込みで故意であると判断して罰則を与えると、万が一過失である場合に社員から法的措置を取られる恐れがあります。企業側のリスクが高くなるため、必ず故意か過失かの判断を行いましょう。
なお、どちらの場合でも企業側には過剰に支払った経費の返還請求を行う権利があります。
③必要に応じた処分
不正の証拠を確保して故意か過失かの判断ができたら、本人へ事実確認を行いましょう。
不正を認めた場合は内容を書面にまとめ、本人に事実として認めるという署名をさせます。その後、会社内で減給や解雇などの処分を決定します。
また、不正内容が悪質な場合や不正額が高額な場合などは、法的措置を取ることも検討してください。業務上横領罪に問うことや、損害賠償請求を行えるケースもあります。
不正を防いで適正な経費管理を行いましょう
経費精算の不正リスクは、どのような会社でも起こりえることです。経費精算の不正は、利益の減少や企業ブランディングの低下など、さまざまな悪影響があるため、不正を防止する効果的な対策をしなくてはなりません。
経費精算の不正を防止するには、社内でのルール作りやチェック体制の整備が必要です。また、経理担当者の負担や申請ミスの軽減には、経費精算システムの導入が効果的でしょう。
社内の問題点を解決できる対策方法を選択し、不正のない健全な経費管理を行ってみてください。
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