AIによってなくなる仕事とは?理由や残る仕事、新たに生まれる仕事を紹介
AIの普及が進むにつれ、多くの仕事がAIに置き換わることが予測されています。では、AIの恩恵を受けつつ雇用や社会経済を守るためには、一体どうすればよいのでしょうか。本記事では、AIの進歩でなくなる仕事やその対策、日本におけるAI導入の現状について解説します。
目次
AIの進歩によってなくなる仕事がでる理由とは?
米国のオックスフォード大学が2013年に発表した試算では「10~20年以内に労働人口の47%の仕事が機械に代替可能である」と見積られています。
さらに、この試算を基に野村総合研究所が出した試算においても「日本の労働人口の約49%が就いている職業は機械に代替可能である」と結論づけられています。
では、なぜAIの進歩で仕事がなくなると予想されるのでしょうか。詳しい要因について、以下に解説します。
[参照:総務省「平成30年度版 情報通信白書 第1部 特集 人口減少時代のICTによる持続的成長」]
一定の業務精度・スピードを維持できるため
AIは一度作業内容を学習すれば、一定の精度・スピードを維持したまま作業を継続できます。また、人とは異なり疲労やモチベーションなどによる精度・スピードの低下や労働時間の制限がありません。
つまり、人よりも圧倒的に高い効率性を期待できることから、AIが処理できる仕事に関しては、かなりのスピードで代替が進むと言われています。
新しいアイデアを創出できるため
AIは定型作業だけではなく、新たなアイデアが必要な非定型業務にも活用できます。
例えば、AIを使用して広告バナーを自動で生成するツールが既に存在しています。過去の広告を参考に成果をシミュレーションし、より効果の優れた内容にバナーを更新し続けるといった運用が既に実用化されており、今後もさらに発展を続けていくでしょう。
▷AI(人工知能)の意味とは?歴史やビジネスでの活用例・仕組み、できることをわかりやすく解説
日本のAI導入の現状
一般社団法人データサイエンティスト協会が2023年に行った調査によると、日本企業におけるAIの導入率はわずか13.3%でした。
アメリカ企業のAI導入率である30.2%と比べると2倍以上の開きがあり、日本の導入率はまだまだ低い水準と言えるでしょう。さらに「導入済み、かつ活用あり」と回答した割合は日本では6.2%、アメリカでは17.8%とで3倍近くの開きがあり、実践的な利用率も低い状態に留まっています。
[参照:一般社団法人データサイエンティスト協会「Data of Data Scientist シリーズ vol.47『13.1%-職場におけるAI導入率』」]
AIの進歩によってなくなる仕事
AIの進歩によってなくなる仕事には、単純作業の繰り返しや条件分岐によるパターン化が可能であるといった特徴があります。また、ルーティーン化やオートメーション化された業務も、AIに代替されやすい性質を持っています。
AIの進歩によってなくなる仕事の具体例を、以下に紹介します。
事務職
事務職はパソコンを使ったデータ入力や計算、文書作成などが主な業務です。これらの業務は単純作業であることが多く、イレギュラーも発生しにくいため、AIによってなくなる可能性が高いでしょう。
また、一般事務だけではなく、経理・貿易事務といった類似分野も、AIに代替される可能性が高いと言われています。
コールセンタースタッフ
コールセンタースタッフは、顧客からの問い合わせ対応や商品やサービスの営業電話を行うことが主な業務です。そして、こうした業務の一部は、既にAIへの代替が始まっています。
今後は一般的な問い合わせについてAIが対応し、クレームや複雑な内容の問い合わせだけを人が対応する方式になると考えられており、既にそうした運用を導入する企業も増えています。
ホテルスタッフ
ホテルの受付業務はルーティン作業であるため、AIが代替しやすいと言われています。
また、顧客を客室まで案内する客室係の仕事についても、なくなる可能性が高いでしょう。実際に、既にホテルのフロントスタッフや客室係の代わりとして、ロボットを導入している企業も現れています。
運転手・配達員
タクシーや鉄道の運転手は、いずれAIに代替されると言われている職業です。自動運転技術は年々進化しており、アメリカや中国では既に無人のタクシーが登場しています。また、日本でも無人自動運転を導入している鉄道が存在しており、更なる技術改良も進められています。
また、AIによる運転は居眠りや不注意などのヒューマンエラーが起きないため、事故率を大きく減らすことが期待されています。今後は決まったルートを走行する場合には無人タクシーを、要介護者などサポートが必要な利用者のみ有人タクシーを、といった柔軟な運用が進んでいくでしょう。
さらに、商品や荷物を配達する配達員も、AIに代わる可能性が高いでしょう。アメリカでは既に宅配ロボットが利用されています。日本でもオンラインショッピングの普及による配達員不足が問題となっているため、急速に配達の自動化が進められていくでしょう。
スーパー・コンビニ店員
スーパー・コンビニ店員の主な業務であるレジ打ち、品出し、在庫管理、発注業務などは、AIが得意とする分野であるため、人の仕事ではなくなる可能性が高いと言われています。
実際に、セルフレジを導入している店舗や、無人コンビニが既に登場しています。また、完全な無人化とはいかずとも、レジ打ちや発注業務だけをAIが担当するなど、人との分業化がますます進められていくでしょう。
銀行員
銀行員には窓口業務や事務、金融・事業支援アドバイザリー、金融商品の営業など、さまざまな業務があります。なかでも、窓口業務や数字の確認作業、審査といった業務はルーティン化された単純作業であることが多く、AIに代替される可能性が高いでしょう。
今後、銀行員の仕事は金融商品の営業や顧客・融資先へのヒアリングなど、柔軟な対応やアプローチが求められるものに絞られていくと考えられます。
ライター
ライターはメディアに掲載する文章を書く仕事です。近年では、ChatGPTのように指定した内容や形式の文章を出力できるAIも登場しており、文章の出力やリライト、校正、SEOキーワードの提案など幅広く実行できます。
現時点では、文章の正確性や著作権などの課題から人の手による編集が求められていますが、今後はライターの仕事内容も大きく変わるかもしれません。
通関士
通関士は輸出入の許可を出す税関に対して、貨物を通すための審査・申告の手続きを代行する仕事です。国家資格の一つであり、たびたび変化する法律や品目ごとの規制・税率などを把握し、正確に仕事を進めなければなりません。
通関士の業務のなかでは、書類作成などの単純作業はAIに代替されると言われています。ただし、輸出入業者や税関など人とのやりとりが発生する場面や、イレギュラーな対応には人の手が必要となるため、完全に無くなることはないでしょう。
警備員
警備員の仕事は、施設内の巡回や警備、交通誘導、貴重品の警備などが挙げられます。しかし、AIを搭載した監視カメラは不審者や異常の検知が可能であるため、警備員の仕事には代替できる要素が多く存在します。
したがって、今後は監視はAIに任せて異常があったときだけ人が対応するなど、警備に割く人員を減らす方向へ変わっていくでしょう。
会計監査
会計監査は主に会計士や監査法人の仕事です。企業が作成した財務諸表が適正であるかどうか、企業の経営状況に問題がないかを確認することが役割です。
この仕事は、定量的な計算やチェックの性質が強いため、ほぼ全てがAIに代替可能になると言われています。
工場作業員
工場作業員は、工場での製造、物品管理、検品などを行う仕事です。これらの業務はマニュアルに沿った単純作業であることが多く、既に多くの工場でAIが導入されています。
AIは人とは違い、疲労や集中力の低下などによるミスが起きないうえ、休憩なしで動作し続けられるため、24時間稼働させられる点が大きなメリットです。将来的には、工場作業員に割く人件費が減り、より高度な業務に人が集中していくでしょう。
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AIが進歩しても残る仕事
AIが進歩しても残る仕事の特徴として、人との深いコミュニケーションや、状況に合わせた個別対応が求められる点が挙げられます。また、人の命を預かるような高度な仕事も、AIには代替しにくいと言えるでしょう。
AIが進歩しても残ると予測される仕事について、以下に具体例を紹介します。
学校教員
学校で子どもへの教育を行う学校教員は、一人ひとりの状況に合わせた臨機応変な対応が求められるため、AIには代替できない仕事です。
また、学校は学業に対する教育だけではなく、情操教育を担う機能も備えています。子どもは周囲との関わりのなかでコミュニケーションの取り方を学ぶため、学校教員の存在は今後も欠かせないと予測されています。
保育士
保育士の仕事は、乳児から小学校入学前の子どもを預かって保育することです。学校教員と同じく、AIには代替できない柔軟な対応が求められる役割の一つです。
保育士には子どもたちの命を預かる重要な責務があり、常に万が一に備えた行動が求められるため、今後もAIが代替することは難しいでしょう。
介護士
介護士の仕事は、サービス利用者に対して身体介護や生活援助などを行い、生活全般をサポートすることです。利用者の状態に応じた対処や、会話によるケアなどが求められます。
力仕事の側面については、既に介護ロボットの開発が進められていますが、臨機応変な対応や精神的なケアについては、今後も介護士の存在は欠かせないでしょう。
カウンセラー
カウンセラーの仕事は、依頼者の相談に乗って悩みや問題を聞き、本人が解決するための手助けをすることです。しかし、相手の気持ちに配慮してコミュニケーションをとることや、適切なアドバイスをしたりすることは、AIの苦手分野とされています。
また、技術の発展によりAIが人の感情を理解できるようになったとしても、多くの相談者は生身の人間への相談を望むでしょう。したがって、AIが進歩してもカウンセラーの需要は維持されると言われています。
医師
医師の仕事は、患者を診察して適切な治療を行うことです。人の命を預かるうえ、高度な知識や観察力が求められるため、AIでの代替は今後も難しいとされています。
なお、医師の仕事の一部を担うAIも既に登場していますが、あくまで補助的な役割として考えられており、医師の仕事を全て奪うことは考えにくい状況です。
美容師
美容師の仕事は、カット、カラーリング、パーマなど、顧客の髪の毛のケアを行うことです。美的感覚やセンスに加え、流行の変化や経験を元にした、臨機応変な対応が求められます。
感覚的な施術に加え、顧客とのコミュニケーションスキルが求められるため、今後もAIに代替されることは考えにくいでしょう。
コンサルタント
コンサルタントの仕事は、顧客企業の課題を解決するための戦略の立案や、業務プロセスの改善を行うことです。顧客と深いコミュニケーションを重ねたうえで、信頼関係を構築する必要があるため、AIでの代替は難しいと言われています。
ただし、戦略立案のためのリサーチや資料作成などはAIにも代替できます。業務を効率化させるために、部分的にAIを活用する機会は増えていくでしょう。
AIによって新たに生まれる仕事の例
AIの発達によって、今後新たに生まれる仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。予想される新しい仕事の例を、以下に紹介します。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、膨大なデータを統計学やアルゴリズムを元に分析し、経営や課題解決に役立つ情報を見つける仕事のことです。プログラミングやマーケティングなど、幅広い知見が求められます。
データの分析はAIが得意とする領域ですが、分析を基にした改善策の立案や新たな価値の創出は、いまだ人にしかできない仕事です。つまり、AIを活用しながらデータの価値を引き出す人材の必要性が、今後はより高まると予想されています。
AIエンジニア
AIエンジニアは、AI技術を駆使したシステムやソフトウェアを開発する人のことです。プログラミングスキルだけではなく、統計学・データ分析などさまざまな知識が求められます。
AIエンジニアの役割は、顧客の問題を解決するAIを開発し、データを入れて学習させることです。さらに、AIが学習したデータを元に出力した内容を分析するのも仕事です。AIの発展が続く以上は、今後もその需要は増し続けるでしょう。
アノテーター
アノテーターとは、AIが機械学習をするうえで必要な教師データを作成するアノテーション業務を行う人のことです。AIが出力結果の正否を判断するために必要となるめ、AIの品質を大きく左右する仕事です。
AIエンジニアの一形態として、一つの領域に特化した役割と言えるでしょう。
AI事業開発責任者
AI事業開発責任者とは、AIを活用したサービスや業務の管理を行う責任者のことです。
AI事業を安全かつ効果的に取り入れるために必要な役割で、AI戦略の立案から実施まで全体を管理します。
サイバー都市アナリスト
サイバー都市アナリストとは、都市で収集されたデータやシステムのセキュリティを管理する仕事です。将来的には世界中の都市に無数のセンサーが設置され、電力供給やごみ収集などのインフラサービスが自動化されると予測されており、その管理を担う役割です。
サイバー都市アナリストの主な仕事は、これらのインフラサービスに関わるAIの管理や、センサーやシステムの保守点検といった領域となるでしょう。
AI支援医療技師
AI支援医療技師とは、病院の少ない地域へ医師が遠隔操作を用いて検診を行うために、さまざまな技術支援を行う人のことです。AIを搭載したシステムやソフトウェアを用いて、全国どこでも最先端の医療を受けられるように支援することが役割です。
遠隔医療の発達次第では、多くの病院に常設されるポジションとなる可能性が高いでしょう。
フィットネス・コミットメント・カウンセラー
フィットネス・コミットメント・カウンセラーとは、AIが分析・管理したデータを元に、栄養や運動などの健康に関するアドバイスをする人のことです。健康には精神面も大きく関わるため、顧客の感情に寄り添いながらアドバイスをするスキルが求められます。
つまり、現在におけるフィットネストレーナーが、AIによる分析能力を備えたような役割が想定されています。
財務健全性コーチ
財務健全性コーチとは、顧客のデジタル取引の管理・サポートを行う仕事です。デジタル金融システムの知識に加え、顧客の要望を聞き出して適切にアドバイスするコミュニケーションスキルが求められるでしょう。
近年では、AIの普及により仮想通貨や少額融資など、新たなデジタル金融システムが生まれています。これらの複雑なシステムを一般のユーザーが理解することは難しいため、金融システムに精通した専門家への需要が高まっていくでしょう。
ゲノム・ポートフォリオ・ディレクター
ゲノム・ポートフォリオ・ディレクターとは、AIを活用した遺伝子研究によって生まれた新薬の販売戦略を考える役割を指します。近年は遺伝子研究にもAIが活用されており、さまざまな新薬が大量に登場することが予測されています。
したがって、これらの新薬を消費者が安心して使えるように説明したり、適切に販売するマーケティングを担う専門家が求められるようになるでしょう。
AIによって仕事をなくさないための対策
AIの発達で仕事を失わないためには、AIと人の得意分野をよく理解して、時代に沿った体制を築く必要があります。
そのためには、AIに関する知識を身につけることが大前提となります。AIのメリット・デメリットを把握し、自らの仕事にどのような活用方法があるのかを、少しずつ理解していきましょう。
また、AIにはできない人間の専門領域を磨くことも重要です。新商品・サービスの開発やクリエイティブな仕事など、AIにはできないスキルを伸ばしていけば、時代に沿った新たな仕事を生み出すこともできるはずです。
▷【初心者向け】AI(人工知能)の作り方|必要なスキルやおすすめのツールを紹介
AIとの協業体制を構築し新しい価値を生み出そう
AIの進歩により、将来的にAIと置き換わる仕事が生じることが予測されます。AIによって仕事をなくさないためには、AIの得手不得手を深く理解しつつ、人間にしか生み出せないクリエイティブな価値を見つけることが重要となるでしょう。人とAIそれぞれの得意分野を活かした協業体制を構築し、新たな時代に対応するために役立ててください。
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