【解説】請求書発行・処理業務に関する不正のリスクや防止策とは?
請求書は重要ですが、複雑な業務であることから不正行為や処理の間違いが発生することもあります。事前に問題を防ぐため、請求書業務について理解が必要です。本記事では、請求書発行や処理業務に関する不正のリスク、防止策について解説します。
目次
請求書発行や処理業務に関する不正のリスク
請求書の発行や処理は複雑な業務であり、さまざまな不正のリスクがあります。ここでは、請求書発行や処理業務において想定される不正のリスクについて解説します。
架空の請求書発行
実際には行われていない取引の架空請求書を発行し、着服することは不正行為に当たります。個人で行う場合もあれば、会社ぐるみで不正を働く場合もあるので注意が必要です。
大量の請求書を処理する大企業などでは、経理業務に追われていると見覚えのない請求書に気づけないこともあるでしょう。一つひとつは小さな金額でも、発覚した頃には膨大な金額になっていることもあります。特に、入金日までの期間が短い場合などは注意が必要です。
請求書の改ざん発行
請求書を改ざんし、金額を水増しして請求することも不正行為に該当します。具体的には、交通費・宿泊費・接待費などの領収書を実際より高い金額に書き換えたり、一度経費精算した領収書の日付や金額を書き換えて重複精算するといった行為があげられます。
これらは、金額や但し書きなどの必要情報が空欄の領収書や手書きの領収書で起こりやすい不正行為です。また、取引先と共謀して水増し請求を行っている場合もあります。
不正請求による横領
横領は大きく分けると、「単純横領罪」「業務上横領罪」「遺失物等横領罪」の3つのパターンがあります。不正請求による横領はこの中の業務上横領罪に当たります。
私的に使ったお金を経費として請求する行為や請求書の水増し・架空請求により、個人的にキックバックを受け取るといった不正請求も存在します。また、決裁権限を持つ管理者や経理担当者が立場を利用して不正を働く場合もあるでしょう。
▷請求書・領収書を偽造するとどうなる?該当する犯罪や罰則・逮捕について
請求書発行や処理業務に関する不正の罪状
請求書発行や処理業務において、不正を行うとどのような罪に問われるのでしょうか。ここでは、請求書発行や処理業務に関する不正の罪状について解説します。
詐欺罪
架空の請求書や実際に使った経費よりも水増しした請求書などで会社を騙し、お金を受け取ることは、刑法第246条の詐欺罪に該当する犯罪です。詐欺罪が成立した場合、10年以下の懲役が科されます。
また、取引先の担当者と共謀して請求書の不正を働いた場合、自身も取引先の担当者も共同正犯として扱われます。共同正犯とは、犯罪を実行した複数人を自ら犯罪を実行した正犯として扱うことです。
業務上横領罪
自身が管理を任されている会社のお金に手を出し、自分のものにすることは刑法第253条の業務上横領罪に該当する犯罪です。業務上横領罪では、10年以下の懲役が科されます。
職務上会社の金銭を扱う社員や、請求書のやりとりを行う社員、決裁権限のある役員などが対象となる不正です。
私文書偽造罪
領収書や請求書の金額・日付・宛名・但し書きなどを改ざんすることは刑法第159条私文書偽造罪に該当し、3カ月以上5年以下の懲役が科されます。また、改ざんした領収書や請求書を会社に提出した場合、刑法第161条偽造私文書等行使罪が適用され、全体で1つの犯罪として扱われます。
恐喝罪
取引先の担当者を脅して虚偽の請求書を作成させるなど、暴力や脅迫によって不当に利益を得ようとする行為は刑法249条恐喝罪に該当する犯罪です。罰則として10年以下の懲役が科されます。
▷請求書を発行する際に確認したいポイントは?注意点を解説!
請求書発行や処理業務に関する不正の防止策
請求書発行や処理業務の不正を防ぐには、どのような対策を講じれば良いのでしょうか。ここでは、請求書発行や処理業務に関する不正の防止策について解説します。
精算システムを導入する
精算システムは領収書や請求書をデータで管理でき、変更が加えられるとログが残ります。また、入力ミスや過去の請求書と一致しない部分があると検知するため、人の手による不正を防げるでしょう。
さらに、システム上での経費申請や承認が可能となり、管理コストを減らしつつ不正が起きにくい環境を整えられます。
▷【2024年最新】請求書発行システムおすすめ21選比較!メリットや選び方も解説
内部統制を構築する
内部統制とは、法に違反せず健全に会社を運営するための仕組みのことです。「業務の有効性・効率性」「財務報告の信頼性」「法令遵守」「会社資産の保全」の4つを確保するために整備する必要があります。
内部統制を構築するために必要な基本要素は、以下の6つです。
・統制環境
社員全員の意識の共通認識として影響を与えるのが統制環境です。他の5つの基本要素の基盤となる要素を指します。
・リスクへの評価と対応
リスクへの評価とは、社内目標を達成する上で弊害となりうる要因を見つけ、分析・評価するプロセスのことです。また、評価したリスクに対して、回避・低減・移転・受容などの対応を決めることをリスクへの対応と定義しています。
・統制活動
権限・職責の付与や職務の分担などによって、経営者の命令や指示を適切に実行するための方針や手続きを整えることが統制活動です。
・情報と伝達
社内外や関係者間で、職務を遂行するために必要な情報が、正しく適切なタイミングで伝えられる環境を整えることを指します。
・モニタリング(監視活動)
内部統制が機能しているかどうかを、常に監視・評価するプロセスのことです。モニタリングには業務に組み込まれている「日常的モニタリング」と、業務とは独立した別の視点から定期的に行う「独立的評価」の2種類があります。
・IT(情報技術)への対応
ITへの対応とは、組織目標の達成のために定めた方針や手続きに沿って、業務に必要なIT環境を整備することです。
外部に委託する
経費精算をアウトソースするのも1つの手段です。外部のプロに委託することで、経理業務の効率性と正確性を確保できます。
また、出張時における交通手段・宿泊手段手配の代行会社を利用するのも良いでしょう。交通費や宿泊費を一括で請求できるので、社員による不正が起こりにくくなります。
▷請求書処理を自動化する方法!メリットや効率化する際の注意点を解説
▷請求書電子化のメリット・デメリットとは?システム導入の重要性を解説
請求書発行・処理業務に関する不正事例
ここでは、実際にあった請求書発行・処理業務に関する不正の事例について解説します。架空請求や改ざん、横領に関する事例などを詳しく見ていきましょう。
架空請求に関する事例
取引先と共謀して架空請求を行った事例です。兵庫県神戸市の製品加工業「明治産業」の社長と、姫路市のゴムパッキン製作会社の社員を合わせた3名が逮捕されました。
2016年から3年間にわたって、架空の請求書を用いて取引を捏造したとされています。実態がないにもかかわらず、ゴムパッキン製作会社が明治産業から製品を仕入れたように装い、合計約1,400万円を騙し取りました。
改ざんに関する事例
宮城県栗原市のJA新みやぎの子会社「新みやぎサービス」の管理職が起こした改ざんの事例です。
2011年4月から11年にわたって、合計120件、中古車販売業者3社へ2億円以上の金銭を流出させています。過去に車を購入した顧客らの名義を利用した偽造請求書を使い、取引があったかのように見せかけていました。
さらに、架空の売り上げを未収金扱いにし、入金を装って未収金の付け替えをするなどの経理操作も行ったとされています。
オークションなど、迅速な支払いが必要な中古車取引における特例を悪用した不正です。
横領に関する事例
三菱食品の連結子会社「ファインライフ」の元執行役員が起こした横領の事例です。
2004年6月から約11年間にわたり、偽造請求書を用いて合計約9億8,000万円を着服しました。役員による単独決裁が可能だったことを悪用したと考えられます。
この件を踏まえて、三菱食品は該当の連結子会社の業務フローの見直しを行い、役員を含め単独での支払決裁ができないようにするなど規程を整備しました。また、本社から追加で経理部門に人員配置を行う、コンプライアンス研修を強化するなど、再発防止に向けた取り組みを徹底しています。
請求書発行におすすめのソフトを紹介
ソフトを使用すると経理業務を効率化できるだけではなく、不正の防止にも役立ちます。ここでは、おすすめの請求書発行ソフトを紹介します。
請求管理ロボ
請求管理ロボは、毎月の請求業務を効率化できるクラウドサービスです。インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しており、定期的にアップデートされるため法改正にも迅速に対応できます。
入金管理は1つの画面でまとめてできるので便利です。また、決済代行サービス「サブスクペイ」を連携させれば、クレジットカード・口座振替・コンビニ決済・銀行振込・バーチャル口座といった複数の決済手段に対応できます。
提供元 | 株式会社ROBOT PAYMENT |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 59,000円/月〜 |
導入実績 | 導入企業500社以上(※2023年2月時点) |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
BtoBプラットフォーム 請求書
BtoBプラットフォーム 請求書は、請求書の受取・発行の両方に対応できるシステムです。紙の請求書はAI-OCRで自動読取できるため、すべての請求書を一括管理できます。
請求書の発行や入金消込が自動でできるので、経理業務の効率化が可能です。また、会計・販売管理システム、経費精算・債権管理システム、ワークフローシステム、データ連携ツール、ビジネスチャットツールなど、さまざまな外部ツールとも連携できます。
提供元 | 株式会社インフォマート |
初期費用 | 110,000円(税込)〜 |
料金プラン | 22,000円(税込)〜 |
導入実績 | 利用企業832,826社(※2021年時点) |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
freee(フリー)会計
freee会計は、経理業務が初めての方でも使いやすいシステムです。銀行口座・クレジットカードとの連携や、写真を撮るだけで領収書を自動読み込みできる機能など、入力業務を効率化できる機能が備わっています。
サポート体制が充実しているのも魅力です。チャットや電話相談によるサポートだけではなく、ヘルプページ・YouTube・セミナーも用意されているので経理業務に関する知識を深められます。
提供元 | freee株式会社 |
初期費用 | 無料 |
料金プラン | 法人向け(年払い)
法人向け(月払い)
個人事業者向け(年払い)
個人事業者向け(月払い)
|
導入実績 | 有料課金事業所数38万事業所(※2022年6月末時点) |
機能・特徴 |
|
URL | 公式サイト |
請求書発行や処理業務を管理し不正を防止しよう
請求書発行や処理業務には、さまざまな不正のリスクがあります。実際に使った経費より多く請求したり、私用で購入したものを経費申請したりすることは日常的に起こりやすい不正です。一つひとつの金額は少額でも、積もり積もれば膨大な損害となってしまいます。
これらの不正を事前に防ぐために請求書発行や処理業務を適切に管理することが重要です。システムの導入や内部統制の整備、場合によっては外部委託などを行い、不正が起こりにくい環境を整えましょう。
▷請求書の再発行を依頼されたときの対処法!手順・注意点・法的リスクを解説
▷請求書の法的効力とは?法律上の根拠や有効期限・未払いへの対処法
▷請求書の訂正方法やルールとは?金額ミスや再発行の対処法について
請求書発行システムの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら