給与計算のミスを防止するには?5つの原因と対策方法を徹底解説
給与計算にありがちなミスを項目別に事例で紹介するだけでなく、項目ごとの対策まで解説しています。業務の効率化や給与計算ソフト、アウトソーシングを利用するメリットについても、詳しく記載しているため、経営者はもちろん労務担当者にもぜひ参考にしてください。
監修者 天野 美由紀 天野社会保険労務士事務所 代表 会計事務所、中小企業の総務経理部門の総責任者を経て、在職中に社会保険労務士資格を取得し独立開業に至る。 会社員時代にメンタル不調で退職せざるを得ない事象を幾度か経験し、職場環境がいかに重要であるか痛感する。1日の大半を過ごす場所でもあるため、人材の定着を重視し、働く環境を整えるサポートに注力している。また実務の経験を活かし、会計や税務を含めた多角度からの役員及び従業員の退職金制度設計や賃金制度設計、社会保険料最適化のプランを提供している。
目次
そもそも給与計算にミスがあってはいけない
給与計算は労務業務の中でも従業員の生活と密接しているため、非常に重要な業務です。当然ながら給与担当者はミスをしないように細心の注意を払いながら、多くの工程を経て給与の計算をします。
企業にとって給与計算は、個人ごとの働き方が異なる観点からもとても煩雑な作業であり、ミスが許されない業務となります。
しかし、労働基準法の改正などが行われると、ミスが起こる可能性は極めて高まります。給与担当者は、こういったミスを起こさないために、あらゆる事象を理解しておく必要があります。
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給与計算でよくあるミス
そもそもミスがあってはならない給与計算ですが、給与計算で起こるミスはどのようなものがあるのでしょうか。
急な計算のミスを解消するため、以下の項目別に、どのような場合にミスが起こりやすいかをひとつずつ解説していきます。
有給休暇・残業時間の計算ミス
まずは一般的にミスが起こりやすいと言われるのは、有給休暇の取得を考慮した場合や残業時間など個人ごとに時間を計算する場合です。
これは勤怠管理と紐づいており、まず勤怠管理を従来の紙形式やエクセルなどで管理している企業は、自動化されている企業に比べ人的ミスが多く発生してしまう傾向にあります。
扶養変更・異動などの入力ミス
次によく発生するミスは、従業員の生活スタイルの変更などにより給与に影響がある場合です。例えば、住所変更に伴い発生する通勤経路が変わる場合に通勤交通費の変更や、扶養家族が増えることによる家族手当の変更、また源泉所得税の変更など、さまざまなケースの変更があります。
給与変更業務の締め日に間に合うように従業員が申請することを忘れている場合や、一部の変更申請しかない場合もあるため注意が必要です。
年末調整での入力ミス
そのほかの要因としては、年末調整のように年に数回しかない処理の場合にミスが多く見受けられます。
また、給与改定に伴う金額の変更や住民税控除額の変更、さらに社会保険料の等級変更による控除額の変更などミスが起きやすいため、給与担当者は年間スケジュールをしっかり立てて未然にミスを防ぐように留意しましょう。
従業員のデータ変更ミス
従業員によるデータ変更を承認している企業の場合は、人的ミスが起こりやすくなります。住所変更時のデータ入力ミスなど、さまざまな入力ミスによって交通費の金額が変更されていない場合などがあげられます。
さらに、給与を支給した後で給与の計算をし直すことはできません。そのため、仮に年末調整の時期をまたいでしまうようなことになると再度年末調整をし直すなどの処理が必要になります。
労務担当者は従業員の勤怠管理やライフスタイルの変更にも注目しておく必要があります。
給与計算は1つの事象に対し、複数の個所に影響が出ますし、その事象も不定期に起こることがミスを誘発させる原因であると思います。極力人の手を介さないようシステム化したり、チェックの工程を増やしたりという対応が有効になります。
給与計算でミスが発生する5つの原因
ここでは給与計算でミスが発生してしまう5つの原因について紹介していきます。
- 複数名で給与計算の作業をしている
- 保険料の徴収の計算を間違えている
- 改定届の届け出漏れ
- 随時改定や年度ごとの改定が漏れている
- 日割り計算の間違い
原因1:複数名による作業
一般的な企業では、給与計算業務を複数名で担当している場合が多く、役割分担とまではいかないデータ入力の際に入力漏れなどのミスが起こりやすいです。1人で給与計算を行う場合は、ひとりの担当者があらゆる事象を把握している場合が多く、ミスが起こりにくいとも言われています。
こういったミスを防ぐために、複数名で作業を分担する場合には担当分野を固定せず、担当者全員が全体を把握できる仕組みを作るとミスが軽減するでしょう。
原因2:保険料の徴収の計算を間違えている
現状の日本では、保険料は従業員ごとに違います。さらに保険料は年齢によっても変化します。介護保険料などがわかりやすい例といえるでしょう。介護保険料は40歳になる誕生日の前日が属する月から支払う必要があります。
5月2日が誕生日の人は5月からですが、5月1日が誕生日の人は4月から徴収されるため、対応するには正確な知識がないと給与計算にはミスが起こります。
また、保険料の仕組みは定期的に更新されます。新しい制度ができたり税率が変わったりといった最新の情報を理解しておく必要もあります。
▷社会保険料の給与計算方法とは?会社と従業員の負担割合や注意点を解説
原因3:改定届の届け出漏れ
改定届の申請漏れにも注意が必要です。例えば従業員の昇給や降給、パートから正社員に雇用契約の変更などで給与金額が大きく変わる場合は、標準報酬月額の改定届の提出が必要です。
保険料標準報酬月額に伴って増減しますが、改定届は頻繁に提出する類のものではないため、ミスが起こりやすいです。また、転居による交通費の変更や、住居手当が変更される場合も改定届の提出が必要です。
しかし、一時的な時間外手当による報酬があるときは提出する必要はありません。このように改定届の提出が必要な条件を担当者がよく把握し、失念しないように注意しましょう。
原因4:随時改定や年度ごとの改定が漏れている
上記でお伝えした改定届について、さらに詳しく説明します。この改定届の提出や申請漏れが、給与業務においては複雑でミスが多発する傾向があるため、十分に理解しておく必要があります。それでは具体的にどのような改定届でミスが起きやすいか見ていきましょう。
- 昇給や降給で固定的賃金に変動があった場合
- 固定的賃金が変動した月以降の3か月間と、これまでの平均月額に該当する標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上である場合
上記の3つの条件にすべて当てはまる場合は、月額変更届を提出しなければならないため、注意が必要です。
原因5:日割り計算の間違い
一般的に企業では、途中入社や退職する場合、給与は日割りで計算し支払いを行います。
その時の社会保険料は、月末に在籍していた場合にはその会社で保険料がかかり、月の途中で退職をする場合はその月の社会保険料はかかりません。
この部分は本当にミスが発生しやすく、細心の注意を払う必要があります。
給与計算のミスを防止する5つの対策
ここからは、給与計算で起こりやすいミスとその原因を、項目別に解説していきます。
- 保険料率の改定把握には年間スケジュールを作成
- 扶養変更・異動などの入力忘れを防止するにはダブルチェック
- 控除項目の変更忘れ防止にはチェックリストを活用
- 月額変更届の届出忘れ防ぐためにマニュアルを作成
- 日割り計算を間違えの防止には給与計算ソフトを導入
対策1:保険料率の改定把握には年間スケジュールを作成
毎年改定されるものと言えば、社会保険料と住民税額です。改定されることを知っている場合であっても頻繁に行う作業ではないため、変更月を忘れるなどのミスが起こりがちです。毎年決まった月に改定される保険料率によるミスを防ぐために、年間スケジュールを作成しましょう。
- 3月:健康保険料率
- 4月:雇用保険料率
- 6月:住民税額
- 9月:厚生年金保険料率
担当者はこれらの業務の年間スケジュールを組んで、失念しないように注意しましょう。
対策2:扶養変更・異動などの入力忘れを防止するにはダブルチェック
最もミスが起こりやすい扶養人数の変更や異動などの変更事項の入力忘れを防ぐには、入力後のダブルチェックを徹底しましょう。
別の担当者がミスをした場合であっても、視点を変えて確認することで事前にミスを防ぐことができます。
▷給与計算に必要なダブルチェックのポイントとミスをなくす防止策とは?
対策3:控除項目の変更忘れ防止にはチェックリストを活用
控除項目の変更忘れ防止には、チェックリストの作成をおすすめします。例えば介護保険料は40歳から開始され、また2020年度からは65歳以上であっても雇用保険料の納付が必要になりました。
介護保険料については、誕生月の前日から適用され、雇用保険料は4月1日時点での年齢で適用です。その年に適用となる人と適用されない人のデータを抽出し、事前にチェックリストを作成しておくと失念する可能性が低くなります。
対策4:月額変更届の届出忘れ防ぐためにマニュアルを作成
ありがちなミスとして、月額変更届の提出漏れがあります。そのミスを防ぐために手順をマニュアル化しておくと、スキルが十分ではない担当者でも業務のミスが低減します。
項目別の業務をマニュアルどおりに行うことで、行うべき業務をうっかり失念してしまうミスも防げます。
対策5:日割り計算を間違えの防止には給与計算ソフトを導入
中途入社などで給与の日割り計算を手計算で行うと、人的ミスを犯しやすくなります。また、法改正がされていないか常にアンテナを張り、ミスのない正しい給与を支払う必要があります。
中には税率の変更を忘れてしまい支払額に間違いが生じるなど、単純な計算ミスも多く見受けられます。そのような人的ミスを防ぐには、給与計算ソフトの導入をおすすめします。
給与計算ソフトを導入することで計算などの人的ミスが低減し、税率においても自動で更新されるためミスを減らすことができます。
給与ソフトを利用していても完全に安心とは言い切れません。設定を間違えているため計算単価が違っているケースも割と多いです。給与ソフトの設定は給与計算の仕組みを理解していないと難しい点もあります。安心してソフトを利用するために、設定だけでも専門家にチェックしていただくことをおすすめします。
▷【2024年最新版】給与計算ソフトおすすめ11選!タイプ・規模別に徹底比較
給与計算をアウトソーシングにするのも一つの手段
企業によっては、社労士との関係性が薄い会社も多いのが日本の現状です。そのような場合には、アウトソーシングを検討してみるのも良いでしょう。
給与計算をアウトソーシングすることによって、給与計算に関する複雑な作業を全て代行してくれるため、面倒な作業を全て外部に委託することができます。
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給与計算のミス防止には給与計算システムがおすすめ
給与計算でのミスを避けなくてはならないとはいえ、人の手が介入する以上、ミスを完璧に防ぐことは難しいです。そうした場合に活用したいのが、各社から販売されている給与計算システムの導入です。
煩雑でミスを起こしやすい業務も、給与計算ソフトがあれば自動で算出してくれます。また、人事管理システムや勤怠管理システムと連携させることで人的ミスを軽減してくれるため、労務管理や給与計算にも役立ち、業務の効率がアップします。
システムの導入を検討されている方は、ぜひ給与計算システムの資料を請求してみてください。
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給与計算は、どの企業にとっても必要不可欠な業務です。給与計算に関わっているのは担当者だけではなく、従業員の生活に直接関係してくるものであるため、ミスがないように未然の防止策が必要です。
手作業での給与計算だとミスが発生しやすくなるため、クラウド型の給与計算システムを導入することにより計算ミスを防止できます。導入は簡単にできるので、ご担当者の方はぜひ検討してみてください。
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給与計算は常に100%の正確性が求められる非常に厳しい業務ですね。ただ、どうしても人の手を介するためどこかしら間違いが発生してしまう可能性があります。あまりに頻繁に間違いが起こると従業員からの不信感にもつながりますので間違いをなくす対応をしていきましょう。