リスキリング経験者の9割が良い影響があったと実感
一方64%がリスキリングを知らない「認知度の低さ」も明らかに
株式会社kubellが運営するビズクロでは、企業におけるリスキリングの実態について、アンケート調査を行いました。リスキリングの認知度や利用率などをレポートします。
リスキリングの実態調査
株式会社kubellが運営するビジネスメディア「ビズクロ」では、20〜50代の会社員を対象に、リスキリングの実態調査アンケート調査を実施しました。
調査概要
- アンケート実施期間:2024年9月12日〜9月13日
- 調査対象:国内在住の20歳から59歳までの男女
- 有効回答数:1,203名
- 調査機関:『ビズクロ』(運営元:株式会社kubell)
- 調査方法:セルフ型アンケートツール(サーべロイドを利用)
※引用、転載の際は出典元として、『ビズクロ』と記事URLの明記をお願いいたします。
経済産業省が主体となってリスキリングが推進されている
人手不足が嘆かれる現代では、生成AI等の台頭によって一部業務の自動化が進んでいるものの、数多くの企業で、慢性的な人手不足が課題となっています。また、日本の労働生産性はOECD加盟国である38カ国中31 位と諸外国と比較し、低い水準で推移しているのが現状です。
その中で、DXを推進するための知識・スキルの獲得、キャリアアップやキャリアチェンジなどを図るべく新たなスキルを身につけることをを目的とした、「リスキリング」に注目が集まっています。経済産業省の主導で「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」が2023年より本格的に始動したことからも、国をあげてリスキリングに力を入れていることがわかります。
出典:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
リスキリングを知らないと回答した人は64.4%
民間企業だけでなく、政府が主導して支援制度を設けるなど、注目されているリスキリングですが、本調査の「リスキリングを知っていますか?」の問いには、64.4%が「知らない」と回答しています。国の注力度合いとは裏腹に、過半数がリスキリングとは何かを知らず、関心度の低さが伺える結果となりました。
リスキリングはしたいが、「学習時間の確保」がネックに
さらにリスキリングを「知っている」と回答した人に対し、「リスキリングに取り組みたいと思うか」と質問をしたところ、「興味はあるが取り組めていない」と回答した人が40%に達し、2.5人に1人が、興味があるにもかかわらず何らかの理由で取り組めていないことがわかります。
そこで、「リスキリングに取り組めない理由」として最も多かったのが、「学習時間の確保が難しい(32.2%)」、続いて「習得すべきスキルがわからない(24.6%)」、「金銭的な余裕がない(19.9%)」、「どこで学べばいいか分からない(15.8%)」といった理由でした。
リスキリングに取り組む目的
次に、リスリングに取り組む目的についての回答結果で最も多かったのは、「新たなスキルの獲得や資格の取得(38.8%)」。次いで多かったのが、「現在の業務に役立てる(29.6%)」でした。
身につけたいスキルとして多かったものは、「語学(42.1%)」「プログラミング(41.8%)」「マーケティング(33.2%)」と続きます。
2017年のエン・ジャパン株式会社が調査したアンケート結果では、20代〜40代が身につけたいスキルの1位が語学力であり、現在も注目が集まっているため、非常に人気の高いスキルの一つと言えるでしょう。
また、プログラミングやマーケティングといったスキルは、比較的給与水準が高く、場所に縛られず自由度の高い働き方が実現できるため、身につけたいと考えてる人が多いのかもしれません。
参照元:エン・ジャパン株式会社「2017年に20代〜40代が身につけたいスキル第1位は「語学⼒」」
リスキリング経験者の9割が「キャリアへの好影響」を実感
リスキリングに「すでに取り組んだ」「現在取り組んでいる」人に対して、「リスキングに取り組んで良かったと思っていますか?」と質問したところ、91.6%の人が「リスキリングに取り組んで良かった」と回答。リスキリング経験者のほとんどが、キャリアへの好影響を実感していることがわかります。
リスキリングに取り組んで得られた具体的な変化・影響の質問には、38.9%の人が「業務の幅が広がった」と回答しており、キャリアの幅が広がるなどの影響を実感。19.5%の人が「昇給・昇格した」と、収入アップにつながったとみられる回答もありました。
以下、具体的な変化や影響をまとめたグラフです。
リスキリングに関連した制度がある会社は少ない傾向
国をあげて推進されているリスキリングですが、所属する会社の「リスキリングに関する社内制度」の活用状況を伺ったところ、「制度がない」と回答した人が、41.8%で約4割の企業で制度がないことがわかります。
加えて、12.9%の人が「制度があるか分からない」、21,7%の人が「制度はあるが活用していない」と回答しています。リスキリングを推進するためにも、制度の作成や従業員への周知、活用するための働きかけなどが必要と言えるでしょう。
リスキリングを活用している人・制度はあるが活用していない人を対象に、どのような社内制度があるのか質問してみると、「セミナー・研修受講費の補助」が最も多く、ついで「書籍購入補助」、「自社のリスキリングプログラム受講」、「大学・大学院通学支援」と続きます。
また、「リスキリングに取り組むにあたって、企業に望むサポートや制度がありますか」という質問には、大きく以下の回答が多く見受けられました。
- 学習費用の負担
- 勉強時間の確保のサポート(業務時間の一環として認めてほしい)
- リスキリングを推奨する雰囲気作り
4人に1人が転職先にリスキリングのサポート制度があることを重視している
リスキリングを知っている人を対象に、転職時、転職先候補の企業の「リスキリングサポート制度の有無」を重視するか、との質問をしたところ、半数以上が「重視する」と回答しています。
このことから、昨今の転職市場においては、キャリアアップやスキルの習得に対して、応援やサポートが得られる環境かどうか、という点も転職先選びの重要なポイントとなっていることが伺えます。
まとめ
アンケート結果から、リスキリングの認知度は約35%、実際に取り組んでいる人の割合については全体の約15%ということがわかりました。
海外では、未経験でも学びの場を提供し育成することを前提とした「アプレンティスシップ制度」やリスキリング実行責任者(CLO)の設置など、必要な人材を自社で育てる取り組みが注目されています。
日本では、ジョブ型採用が主流となっているものの、技術革新が目まぐるしい昨今のビジネス環境においては、十分なスキルを持っている人材を確保し採用するのは非常に難易度が高い傾向にあります。
リスキリングは、日本企業が抱える採用難を解消する、重要な取り組みと言えるのではないでしょうか。