タイムカードで15分単位の計算は違法?正しい勤怠管理と計算方法を解説
毎月の給与計算に大きく影響する勤怠管理。特に、労働時間は何分単位で計算すればよいのかが分からない方も多いのではないでしょうか。本記事では、タイムカードで5分、15分単位での計算は違法なのか、正しい勤怠管理と計算方法をあわせて詳しく解説します。
目次
タイムカードで5分、15分単位の計算は違法?
タイムカードに記載された労働時間を5分、15分単位で計算するのは違法であり、1分単位で管理する方法以外は原則として認められていません。1分単位以外での勤怠管理は、労働基準法の賃金全額払いの原則に違反するためです。
ただし、時間外労働を1カ月単位で算出している場合、1時間未満の端数処理に関しては、打刻まるめが認められています。
ここからは、勤怠管理は1分単位が原則な理由や、切り上げ・切り捨てが認められる場合などを解説します。
勤怠管理は1分単位が原則
勤怠管理は、1分単位で計算して残業代を支給しない限り、労働基準法違反とみなされてしまいます。1分単位以外の勤怠管理は、賃金全額払いの原則に反するためです。
賃金全額払いの原則とは、「労働の対価としての報酬を従業員本人へ現金で支給しなければならない」と定める原則です。1分単位で勤怠管理が行われていない状態は、労働の対価として従業員に支払う賃金を全額支給していないとみなされてしまいます。
従業員は、労働した分の賃金が指定給与日に支払われると見込んで、日々の生活設計を立てています。賃金の支払い漏れが起きると従業員の生活が不安定になるだけでなく、信頼関係が大きく悪化して離職率が増加する可能性が高くなります。
また、労働基準法違反になると、30万円以下の罰金または6カ月以下の懲役が科されます。
従業員との信頼関係維持やコンプライアンス違反を回避するためにも、勤怠管理は1分単位で行いましょう。
[出典:e-Gov法令検索「労働基準法 第二十四条」]
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勤務時間の切り上げ・切り捨てが可能な場合もある
時間外労働・深夜労働・休日労働を1カ月単位で算出している場合は、1時間未満の端数に関してまるめ処理が認められています。まるめ処理は30分以上を1時間に切り上げ、30分未満の端数を切り捨てる方法です。
まるめ処理が認められているのは、給与計算業務を効率化するためです。ただし、1日単位で労働時間を算出している場合、まるめ処理は認められません。例えば、1週間単位の変形労働時間制を採用している場合、まるめ処理は適用できないため注意しましょう。
1週間単位の変形労働時間制は、労働時間が1日10時間・週40時間以内に抑えることを条件に、1日単位で労働時間を調整できる働き方です。まるめ処理を適用すると、規定時間以上の労働が発生するため適用できません。
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ノーワーク・ノーペイの原則
ノーワーク・ノーペイの原則は、給与支払いの基本原則として認識されている概念で、労働が提供された時間のみに賃金の支払い義務が発生する考え方です。
つまり、労働が発生していない分の賃金まで支払う必要はないと提唱されています。遅刻・早退・欠勤が発生した場合、労働が提供されていない時間数の賃金を差し引いて支給します。賃金を控除する場合も1分単位で計算しましょう。
ノーワーク・ノーペイの原則は、雇用形態や給与形態を問わず適用されます。ノーワーク・ノーペイの原則を適用する基準は、労働者都合または不可抗力によって労働していない時間が発生したケースです。
以下に、該当するケースをまとめました。企業側の都合によって労働できない時間が発生した場合は、平均賃金×60%以上の休業補償を支払わなければなりません。
適用される主なケース | 適用外のケース |
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勤怠管理を行う際の注意点
勤怠管理を行う際は、いくつかの注意点があります。正確な勤怠管理を行うためにも、次の3つの注意点を確認しておきましょう。
遅刻や早退も1分単位で記録する
従業員が遅刻や早退をした場合も、1分単位で記録する必要があります。切り上げて処理すると違法となるため注意しなければなりません。
例えば、15分の遅刻や早退を30分として切り上げて処理すると違法です。たとえ何分の遅刻や早退であっても、必ず1分単位で正確に記録することを心がけましょう。
▷遅刻・早退した際の給与計算方法とは?賃金控除や処理の方法について
雇用形態ごとに勤務管理を区別する
正社員やパート、アルバイトなど、雇用形態ごとに正しく勤務管理を行う必要があります。そのためには、雇用形態に合わせた労働時間の把握が大切です。
例えば、正社員の場合は基本的に週5日以上は勤務しており、正確な労働時間の把握が必須です。正社員の中でもフレックスタイム制や裁量労働制など、多様な働き方を採用している場合もあるため、柔軟な管理が求められます。
また、パートやアルバイトの場合は一人ひとりの勤務時間や勤務日が異なるので、よりフレキシブルな対応が必要になる点に注意しましょう。
残業代は正確に算出する
法定労働時間である1日8時間・週40時間を超える労働を従業員に命じた場合、企業側は割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金の算出方法は、基礎賃金×時間外労働時間数×割増率(25%)です。
なお、通勤手当・住宅手当・別居手当などは、労働基準法に従い賃金には含まないようにしましょう。
また、深夜時間帯の労働も割増賃金が発生します。
22時〜5時の時間帯に1時間でも労働を行うと、深夜労働とみなされます。時間外労働や休日労働を命じた日に深夜労働も発生した場合は、深夜労働の割増率(25%)も合算して手当を計算しましょう。
不適切な勤怠管理による企業リスク
5分、15分単位で勤怠管理をしたり、遅刻や早退時に繰り上げて時間を記録したりしていると、労働基準監督署の指導対象となったり信頼を失ったりするリスクがあります。
ここからは、不適切な勤怠管理による企業リスクについて詳しく見ていきましょう。
労働基準監督署の指導対象となる
不適切な勤怠管理があった場合、労働基準監督署の指導対象となる場合があります。
まず、労働基準監督署は企業が労働基準法を遵守しているかを確認するため、調査を実施します。労働時間や賃金のほか、労働条件や安全衛生管理などが具体的な調査項目です。
その際に、不適切な勤怠管理をしていることが判明すると、是正勧告や指導票が交付されるため、問題の改善に取り組まなければなりません。
未払い賃金を請求される
5分、15分単位で計算をして未払いの賃金が発生していると、あとから従業員に未払い賃金を請求される可能性があるでしょう。従業員には1分単位で労働していた事実があるため、未払い賃金への請求権があります。
未払い賃金への請求権は3年であるため、この期間は特に請求される可能性が高いといえます。仮に請求がない場合でも、従業員との間にわだかまりが残り、ほかの従業員からの信頼も失う可能性がある点に注意しましょう。
企業の信頼が損なわれる
5分や15分単位で勤怠管理を行っていたことが問題として指摘されると、社内の従業員だけではなく外部の関係者からの信頼も失う可能性があります。
例えば、投資家から問題が発生した原因や今後の対応について言及されることもあるでしょう。ほかにも、取引先の場合は信用を失うと取引自体がなくなる可能性もあります。
問題が世間にも知れ渡ると、企業へのイメージが悪くなることもあるでしょう。
正確に勤怠管理を行う方法
正確に勤怠管理を行うには、エクセルや勤怠管理システムの活用がおすすめです。ここからは、それぞれの特徴を詳しく解説します。
エクセルで勤怠管理をする
勤務時間を正確に記録して、エクセルで集計すると正確な勤怠管理が行えます。
従業員に勤務時間を入力してもらい、エクセルに備わっている関数やマクロなどを活用して集計すれば、正確な計算が可能です。
しかし、入力内容を誤ったり関数の設定などが間違っていたりすると、正しい集計が行えません。ミスがないように気をつけて入力するほか、ネット上で無料で配布されている集計用のテンプレートなどを活用すると、楽に管理できるためおすすめです。
▷エクセルで勤怠管理する方法!無料テンプレートや運用の注意点を紹介
勤怠管理システムを活用する
勤怠管理システムとは、出退勤の打刻や自動集計、各種申請などの管理が行えるシステムです。勤怠管理システムを活用することで、ミスなく効率のよい勤怠管理が実現します。
出退勤の打刻は、Webブラウザやスマホアプリなどから簡単に行えます。従業員に打刻してもらえば、あとは自動集計して労働時間を算出することが可能です。
1分単位で簡単に管理できるようになるため、業務を大幅に効率化できるでしょう。
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従業員の労働時間を把握し勤怠管理を徹底しよう
タイムカードに記載された労働時間を5分、15分単位で計算するのは違法となります。勤怠管理は、1分単位が原則的なルールです。
正しい給与計算・従業員の健康保護・コンプライアンス遵守のためにも、正確な勤怠管理が求められています。従業員一人ひとりの勤怠データを正確に把握するためには、勤怠管理システムの導入が有効です。勤怠データの自動集計から反映まで、システムで一括管理できます。
あまりコストをかけずに導入できるシステムもあり、予算に制限がある企業でも導入しやすいため、勤怠管理の工数増大にお悩みの場合は勤怠管理システムの導入をご検討ください。
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