大学で必要なBCP対策とは?策定ポイントや実際の具体例を紹介
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近年日本でも策定が求められているBCP対策。様々な企業でBCP対策が実施されている一方、大学などの教育機関ではまだあまり進んでいないのが現状です。そこで本記事では、そんな大学でのBCP対策について、大学で必要とされている理由や具体例を詳しく解説していきます。
目次
大学で必要とされているBCP対策とは?
BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、自然災害やテロといった緊急事態の中でも事業を継続できるよう計画を立てておくことを意味します。
大学においては、学校関係者や地域住民の安全確保、臨時教育カリキュラム、施設の安全管理、地域との連携といった対策が必要とされています。対策の一例は以下のとおりです。
- 学校関係者や地域住民の安全確保:帰宅困難者への避難場所を提供、安否の確認など
- 臨時教育カリキュラム:自宅学習やオンライン授業など
- 施設の安全管理:研究施設の安全管理、大学内の消毒など
- 地域との連携:支援活動など
大学でBCP対策が必要とされている理由
通常、自然災害・テロ攻撃・感染症の流行といった危機的状況は、突発的に発生するものです。そのため、事前に対策を講じていないと対応が遅れ、大学側は教育機関として機能できなくなる可能性があります。
危機的状況にうまく対応できず、一貫性のない行動を取ってしまうと、学生や地域住民に不信感を与えてしまいます。特に大学は避難所として指定されることも多いため、非常時において安全確保を担う重要な存在です。
また、大学には研究施設が存在します。危険物や化学物質による二次被害を防ぐためにも、災害時にどのような対応を取っていくのか、あらかじめ対策を講じておく必要があります。
このように、大学は学生や地域住民の安全確保において重要な役割を担っていることから、BCP対策が欠かせない存在といえるでしょう。
大学におけるBCP対策の目的
大学におけるBCP対策の目的としては、主に「継続的な教育の提供」「学生流出の防止」「イメージアップ」の3つが挙げられます。それぞれ詳しくみていきましょう。
継続的な教育の提供
大学におけるBCP対策は、緊急事態にできるだけ早い通常授業の再開を目指すものです。ただし、状況によっては早期再開が難しい場合もあるでしょう。そのような状況でも通常授業と変わらない教育を提供するためには、事前に自宅学習制度やオンライン授業制度の整備が必要です。
学生流出の防止
一般的に、大学の収入源の多くは学生からの授業料と言われています。緊急事態の対応が遅れたために通学可能な学生数が減少してしまうと、大学の存続問題にも繋がりかねません。
イメージアップ
災害時の的確な対応は、学生や地域住民に安心感を与えます。特に大学は災害時に果たす役割が大きいことから、行動の一つひとつに注目される存在といえるでしょう。
「授業の再開がスムーズで、単位取得に影響が出なかった」「避難所として大学の敷地を使用させてもらえたので、本当に助かった」といったように、BCP対策を徹底することは、結果的に大学の評価を高める効果があります。
大学でBCPを策定する際のポイント
BCP策定は、他の企業や大学が策定したものを単純に真似すればいいというわけではありません。大学ごとに教育方針が異なるため、それぞれの大学に適した計画が必要です。
ここでは、大学のBCPを策定する際に押さえておきたいポイントを3つチェックしていきましょう。
BCP対策の目的を明確にする
まずは想定される危機的状況を洗い出し、BCP対策を導入する目的を明確にしましょう。
BCP対策の目的としては、授業の継続・安全の確保・社会的信頼の向上などが挙げられますが、優先順位も併せて決めていきます。また、緊急事態はできるだけ早期の現状復旧が求められるため、対策を講じる対象を絞ることも重要です。
これらの一連の作業は、大学にとって何が1番重要であるかを再確認する機会でもあるため、大学経営の振り返りにも役立ちます。
BCP対策に必要な組織体制を構築する
危機的状況を洗い出しBCPの導入目的を明らかにしたあとは、BCPの策定に必要な組織体制を構築していきます。
質の高いBCP対策を策定するためには、チーム単位での取り組みが不可欠です。組織の幅広い部署から担当者を輩出し、多様な視点から緊急時の対策を検討できるBCP対策チームを立ち上げましょう。
BCPの策定チームに加えて、実際の非常時に機能するグループを構築しておくことも忘れてはいけません。学生への連絡担当、研究施設の安全管理、地域住民との連携担当といったように、非常時に大学が果たす役割は多岐にわたります。
事前にシミュレーションを行う
BCP対策は初動が肝心です。実行する際、どのようなタイムスケジュールが最適か事前にシミュレーションしておくと、非常時にスムーズな行動が取れるでしょう。
シミュレーションは、自然災害、テロ被害、サイバー攻撃といったように、ケースごとに行うのがおすすめです。それぞれの状況において何が求められるのかをシミュレーションで理解し、それをもとにBCP対策をブラッシュアップしていきましょう。
大学のBCP対策で行われている実際の具体例
ここでは、すでにBCP対策を導入している大学が取り入れている対策をいくつか紹介していきます。
メーリングリストの作成
学生や職員のメーリングリストを事前に作成しておくと、緊急時の安否確認に使用できます。メーリングリストを活用した安否確認は、メールだけでなく、システムやアプリ上で実施することも可能です。
システムやアプリであれば、安否確認以外にも、緊急時の対応マニュアル・避難所リスト・災害時のボランティア体制の構築といったような対策を取る際にも活用できます。また、外国人留学生に対する配慮として、安否確認や連絡事項の文面は多言語表示にしておくとよいでしょう。
学生への教育継続に向けた対策
災害時に身の安全を確保した学生がまず考えるのは、今後の授業がどうなるのかという点です。予定していた授業が中止や延期になった場合、学生の進路に影響を及ぼす可能性があるため、的確な対応が大学側には求められます。
大学によっては、授業ができる施設の確保やオンライン授業の整備といったように、非常時にでも授業を提供できる環境づくりに取り組む大学も存在します。
また、各種証明書の発行を、窓口だけでなくWeb上からダウンロードできるようにしておけば、証明書の必要な就活生や卒業生への影響を最小限に抑えられるでしょう。
災害時における行事への対応
災害時における入学試験・入学式・卒業式といった行事への対応を事前に考えておくと、学生達の不安を取り除けます。
学生生活のイベントは、学生にとって思い入れの深いものです。緊急事態によって中止や延期を余儀なくされた場合、通達が遅れると不信感が募り、大学のイメージダウンにも繋がりかねません。
大学によっては、緊急時の対応を記したものを事前に配布したり、別の場所でイベントを実施できるよう準備したりするケースも見受けられます。
研究施設や研究環境の復旧
授業の早期再開だけでなく、研究施設や研究環境の復旧に対するBCPを講じている大学もあります。
大学にとっては、学生への授業提供と同様に、研究施設の運営も同じように大切です。特に、これまでの研究によって蓄積してきたデータは大学の財産のひとつであるため、データが消失してしまうと大きな損害に繋がります。
研究データのバックアップ体制を大学側で整備しておいたり、非常時でも研究活動が進められるようにクラウドサービスの導入を検討したりしておくと、被害を最小限に留めながら復旧活動に取り組めるでしょう。
大学におけるBCP対策の重要性を押さえておこう
BCP対策は民間企業だけでなく、大学にとっても重要性の高いものです。緊急時に、学生の安全確保はもちろんのこと、地域社会の一員として地域住民との連携が求められるのが大学といえるでしょう。
BCPの策定ポイントとしては、目的の明確化や適切な組織体制の構築などが挙げられます。また、自然災害やサイバー攻撃といった各非常時における事前シミュレーションをしておくと、非常時に取るべき行動がイメージできるようになります。
大学におけるBCP対策の重要性を認識したうえで、適切なBCP対策を練っていきましょう。
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