電子契約におけるタイムスタンプとは?仕組みや役割・必要性や費用を解説
電子契約を交わす際には、タイムスタンプを利用して契約の完全性を高めることが重要です。電子契約を導入する際には、タイムスタンプの仕組みや役割、必要性について詳しく知っておきましょう。本記事では、タイムスタンプの導入方法から費用まで詳しく解説します。
目次
電子契約におけるタイムスタンプとは?
タイムスタンプとは、電子データが作成された時刻情報を残し、改ざんを防ぐための仕組みのことです。具体的には、付与以前に当該文書が存在していたことと、付与後に改ざんされていないことを証明できます。
電子署名に加えてタイムスタンプを利用すれば、後日照会した際に以下の事項を証明することが可能です。
- 締結当事者
- 締結日時
- 締結内容
電子データは便利である一方で、改ざんされやすいという問題があります。そこで、タイムスタンプがデータの完全性を担保し、内容の信ぴょう性を守る役割を担うのです。
電子契約におけるタイムスタンプの仕組み
タイムスタンプは、送信者と受信者のいずれでもない第三者機関が関与することで、その安全性や完全性が担保されるものです。基本的にタイムスタンプは、時刻認定局(TAS)が発行します。
タイムスタンプ発行の流れは次のとおりです。
- 文書送信者がTASに電子文書のハッシュ値を送信
- TASがハッシュ値に時刻情報を加えて発行
- 文書作成者が電子文書と一緒にスタンプを保管
- ハッシュ値の一致により非改ざんをチェック
電子帳簿保存法で定められている要件
電子帳簿保存法は、1998年に施行された法律です。国税関係帳票の電子化について定められています。
帳簿の電子データを保存し利用する場合、「真実性の確保」と「可視性の確保」が必要です。真実性の確保においては、データの訂正記録が確認できる状態にしておくことや、いつ作成されたのかを明らかにすることが求められます。
タイムスタンプは、この「真実性の確保」を図るために必要です。電子契約の作成日や変更日を証明する手段として、タイムスタンプは幅広い企業に利用されています。
タイムスタンプがデータの信頼性を高める
タイムスタンプでは、「ハッシュ値」という電子データ固有の文字列が最初に割り当てられます。他の電子データとハッシュ値が異なるのはもちろんのこと、仮に電子データ内の文書が一部変更されると、その時点でハッシュ値が変化する仕組みです。
このハッシュ値を時刻認証局(TSA)に送信することで、ハッシュ値と時刻情報が含まれたタイムスタンプが発行されます。時刻認証局が発行するタイムスタンプにはデジタル署名が用いられることから、高い信頼性を電子データに与えることが可能です。
電子契約におけるタイムスタンプの役割
電子契約においてタイムスタンプは、「存在証明」と「非改ざん証明」の2つの役割を担っています。それぞれ詳しくみていきましょう。
存在証明
存在証明とは、電子契約書にタイムスタンプが付与された時点で、間違いなくその書類が存在していたことを証明することです。たとえば、電子契約の信ぴょう性を確保するためには、当該書面が「いつ作成されたのか」を正確に記録する必要があります。
作成時刻が不明確だと、契約の効力がいつから発生しているのかが不透明になるためです。第三者機関がタイムスタンプを通じて正確な日時情報を証明することで、発行時点で電子書類が存在したことを証明します。
非改ざん証明
非改ざん証明とは、タイムスタンプが発行された日から電子契約書に改ざんがないことを証明することです。
電子契約の信ぴょう性を確保するためには、存在証明だけでは不十分です。タイムスタンプに改ざんがないことを証明してはじめて、信ぴょう性が確保されます。
電子契約におけるタイムスタンプの必要性
電子契約において欠かせない機能の1つと言われているタイムスタンプですが、具体的にどのような点から必要性があるのでしょうか。
ここからは、電子契約にタイムスタンプが必要な理由を4つ紹介します。
電子署名は「いつ」契約したかの情報が証明できない
電子契約に使用される電子署名だけでは、いつ契約が締結されたのかが証明できません。電子署名は、「契約の当事者(誰が)」と「契約内容(どんな)」を証明できます。しかし、「契約の時刻(いつ)」は、証明できません。
電子署名したパソコンやタブレットなどのデバイスやサーバーに、署名時刻が記録されるケースもあるでしょう。しかし、デバイスやサーバーの設定時刻に誤りがあった場合、正確な時刻は記録されません。悪意を持った人間が、意図的に日時情報を変える可能性もあります。
電子署名だけでは、電子契約書の完全性を確保できないことを覚えておきましょう。
タイムスタンプと電子署名を組み合わせることで完全性を強化
日時を証明できない電子署名の弱点は、タイムスタンプで補完できます。タイムスタンプは、電子契約の「契約日時(いつ)」を証明可能な手段です。もともとタイムスタンプは、電子署名の完全性確保における弱点を補うために開発されました。
電子署名とタイムスタンプの両方を利用することで、「誰が」「どんな契約書を」「いつ」締結したのかを証明できるのです。
電子契約の長期保存にはタイムスタンプを併用
電子契約の長期保存には、タイムスタンプの併用が必要です。
契約の中には、10年以上の長期間契約も少なくありません。しかし、電子署名には1~3年程度の有効期限があり、期限の切れた書類は信ぴょう性が損なわれてしまいます。そこで、タイムスタンプによって電子署名が改ざんされていないことを保証するのです。
ただし、タイムスタンプにも10年程度の有効期限があります。そのため、期限が近付いた段階で新たに発行し、電子署名の寿命を延ばす対応が必要です。この一連の措置を「長期署名」と呼びます。
タイムスタンプ導入方法とは
タイムスタンプの導入には、自社の状況を整理したうえで適切な申請手順を踏む必要があります。ここでは、タイムスタンプの導入方法について確認していきましょう。
タイムスタンプを導入するメリットがあるかどうかを検討
タイムスタンプの導入にあたっては、まず導入メリットの有無を確認します。導入することで得られるメリットは、企業によってさまざまです。たとえば、以下のような状況であれば、導入によって問題解決が期待できるでしょう。
- 経費精算業務に過大な事務労力がかかっている
- 領収書が多すぎて保管や管理に困っている
紙ベースでの契約がメインである企業の場合は、電子契約へ切り替えることで、コスト削減や契約手続きの手間を削減できます。
また、電子署名のみで契約を結んでいる場合は、タイムスタンプの導入によって法的証拠能力が高まります。企業ごとに抱えている課題が異なるため、導入にあたってはその目的を整理することが重要です。
タイムスタンプで利用するサービスの選定
タイムスタンプのサービスは複数存在するため、自社に適したものを選びましょう。サービスを大まかに分けると、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
オンプレミス型は、所有しているパソコンにシステムをインストールするタイプです。カスタマイズ性が高い一方で、初期コストが大きいという特徴があります。
クラウド型は、インターネットを通じてサービスを利用するタイプです。システムを購入する必要がないため、初期費用が抑えられます。
それぞれの特徴を理解し、自社に合ったサービスを選択するよう心がけましょう。
タイムスタンプ導入にかかる費用とは
タイムスタンプ導入にかかる費用は、主に以下の2つです。
- 初期費用
- 月額費用
それぞれ詳しく解説していきます。
最初にかかる導入費用
導入費用は、サービスによって発生するかどうかが異なります。システム導入費用として数十万円かかるケースや、会員登録費用として数千円~1万円程度かかるケースが考えられるでしょう。
初期費用はある程度まとまった金額が発生するため、なるべく避けたいと思うのが自然な考えです。ただし、初期費用がない代わりに月額費用が高めに設定されていることもあるため、総合的に判断するよう心がけましょう。
毎月かかる利用料
毎月かかる利用料の支払い体系としては、主に以下の2つが挙げられます。
- 従量制
- 定額制
それぞれ詳しくみていきましょう。
発行したスタンプに応じた従量制
従量制とは、タイムスタンプの発行ごとに料金が加算される方式のことです。一般的には10円程度が1回あたりの金額と言われていますが、サービスによって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
定額制
定額制のサービスも存在します。定額制の場合、毎月のタイムスタンプ数に上限を設けているケースが一般的です。固定の月額費用であることから予算を組みやすいメリットがありますが、使用頻度によっては無駄なコストが発生してしまうため、注意しましょう。
2020年と2022年の電子帳簿保存法の緩和について
2020年(令和2年)と2022年(令和4年)に電子帳簿保存法が改正され、一部の規定が緩和されました。ここでは、その緩和内容について解説します。
一定の条件のもと、タイムスタンプが不要に
電子帳簿保存法の改正により、一定の条件を満たせばタイムスタンプを付与せずに電子データを保存できるようになりました。
一定の条件とは、簡単に言うと「訂正や削除内容が確認できるシステム」や「訂正や削除ができないシステム」を利用することです。
⑶ 電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(注1)において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。(注1) 訂正又は削除を行うことができないクラウド等も含まれます。
[引用:国税庁「~ スキャナ保存(区分②)に関する改正事項 ~」より]
領収書が一部不要
2020年の改定により、領収書が一部不要になりました。交通系ICカードやQRコード決済を利用したケースでは、領収書が不要になることがあります。システムと連携することで、利用明細を自動的に把握できるためです。
タイムスタンプ対応の電子契約サービス3選
タイムスタンプに対応している電子契約サービスには、さまざまな種類があります。ここでは、特におすすめのサービスを3つ紹介していきます。
1.クラウドサイン
クラウドサインは、130万社以上の導入実績を誇る電子契約サービスです。契約締結から管理までに必要な機能がひと通りそろっており、SalesforseやKintoneのような外部サービスとの連携にも広く対応しているのが特徴です。
提供元 | 弁護士ドットコム株式会社 |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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導入実績 | 130万社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
2.GMOサイン
GMOサインは、国内有数の企業グループであるGMOが運営している電子契約サービスです。月額1万円弱で豊富な機能を利用できることから、個人事業主でも無理のない導入が図れるでしょう。
提供元 | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 |
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初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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導入実績 | 140万社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
3.WAN-Sign
WAN-Signは、4,000社以上の文書管理実績を誇る電子契約サービスです。GMOインターネットグループと共同開発したサービスであり、セキュリティ体制に力を入れている点が特徴です。
データセンターを災害に強いエリアに設置しており、緊急時のリスク対策も徹底しています。
提供元 | 株式会社NXワンビシアーカイブズ |
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初期費用 | 無料 |
料金プラン | 【無料プラン】
【有料プラン】
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導入実績 | 要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
電子契約におけるタイムスタンプの重要性を把握
タイムスタンプとは、電子データの「締結日時(いつ)」を客観的に証明するための仕組みです。第三者機関が発行しており、電子データの存在証明と非改ざん証明に役立ちます。
タイムスタンプは電子署名と併せて利用することで、電子契約の完全性を強化するものです。また、電子帳簿管理法や長期署名に対応するためにも、タイムスタンプは欠かせない機能のひとつといえるでしょう。
タイムスタンプへの理解を深め、電子契約を正しく利用していきましょう。
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