基幹システムとERPの違いとは?役割や機能・メリットとデメリットを解説
効率よく業務を管理するためにシステムを導入する企業が増えています。中でも基幹システムとERPは、幅広く認知されていますが、違いを把握できていない方も多いのではないでしょうか。本記事では、基幹システムとERPの違いについて、役割や機能を詳しく解説します。
目次
基幹システムとは?
基幹システムとは、企業の中心的な業務を支えるシステムのことです。特定のシステムを指す言葉ではなく、企業の規模や業種によって導入する基幹システムの種類や機能は異なります。
例えば、製造業であれば生産工程を適切に管理する必要があるため、生産管理システムが基幹システムに該当するでしょう。一方、小売業であれば、販売管理システムや在庫管理システムが基幹システムになります。
また、財務会計や労務管理は、業種や規模を問わず主要な業務であるため、それらを管理するシステムはほとんどの企業において基幹システムに該当するといえます。
基幹システムは企業の業績を直接左右する重要な役割を果たし、効率的な業務遂行や意思決定を支援するシステムであるため、安定的かつ正確に稼働することが求められます。基幹システムの適切な運用と管理は、企業の競争力を高めるために不可欠といえるでしょう。
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ERPとは?
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業資源計画とも訳され、企業の経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元的に管理し最適化するという考え方、またはそれを実現するためのシステムを指します。
ERPは、会計や人事労務、販売管理、生産管理といった多数の基幹システムを統合していることから、「統合基幹業務システム」とも呼ばれています。あらゆる業務プロセスを統合し、リアルタイムでの情報共有を可能とすることで、業務効率の向上や迅速な意思決定を実現できるのが特徴です。
企業の規模や業種を問わず広く利用されており、現在ではクラウドが進んだことにより、手軽に導入できるようになっています。
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ERPの歴史・由来
ERPの歴史は、1970年代はじめにアメリカで考案された、製造業の生産管理を目的としたMRP(Material Requirements Planning)から始まります。その後、1980年代にはMRP II(Manufacturing Resource Planning)と呼ばれる、製造業の全体最適を目指したシステムへと発展しました。
そして1990年代に入ると、企業全体の資源を一元管理するERPシステムへと進化しました。MRPやMRP2はあくまで生産部門内を効率化するシステムでしたが、ERPでは企業全体の状況を把握することにより最適な生産計画を立てることを目的としています。
日本でも1990年代にERPに注目が集まり、導入され始めましたが、海外と日本の商習慣のギャップから導入に成功する企業は一部に限られていました。しかし2010年代に入り、日本の商習慣にマッチしたERPがリリースされ、さらにクラウド化が進んだことで、現在は多くの企業がERP導入を進めやすい環境になっています。
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基幹システムとERPの違い
基幹システムとERPの違いは、その目的と管理する範囲にあります。
基幹システムは、企業の基幹業務を支えるシステムのことを指し、販売や購買、在庫管理、会計といった特定の業務を効率化することを目的としています。そのため、基幹業務を網羅的にカバーするには複数のシステムを併用しなければなりません。また、部署や部門をまたいでデータを共有する際には、それぞれのシステム間の連携が必要です。
一方、ERPは企業全体のデータを一元管理し、リアルタイムでの情報共有を可能にすることで、全社規模での業務の効率化・最適化を図ることを目的としています。すべての基幹システムを1つのパッケージに統合したものであるため、基幹業務全体をカバーでき、部署や部門をまたいだデータ連携も可能です。
また、基幹システムとERPでは、導入にかかる工数の面でも違いがあります。どちらも導入時にはシステム選定や業務フローの見直しなどの準備が必要ですが、基幹システムは対象とする業務範囲が限定されているため、ERPと比べて工数を大幅に削減可能です。
一方、ERPはカバーする業務範囲が広く、多くの部署にまたがる業務も多いことから、導入準備は大がかりな作業となります。業務フローの変更範囲も大きくなるほか、社内での周知や導入研修、マニュアル作成等の負担も増大する可能性が高いでしょう。
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基幹システムとERPの主な種類・機能
ここからは基幹システムとERP、それぞれの主な種類や機能について紹介していきます。
基幹システムの主な種類・機能
基幹システムには、基幹業務の内容に応じてさまざまな種類・機能があります。主なものとしては以下の通りです。
- 販売管理:見積や受発注、入出荷、売上管理などの販売にかかわる業務を一元管理するシステムです。顧客情報の管理や販売履歴の分析なども可能です。
- 購買管理:企業が必要とする商品やサービスの購入を管理するシステムです。仕入れ先からの購入、発注管理、仕入れ管理などを行い、最適な購買戦略を立てるための情報を提供します。
- 会計管理:企業の財務状況を把握し、経営判断の基礎となる情報を提供するシステムです。財務諸表の作成、会計処理、予算管理などを行い、財務の透明性を保ちます。
- 在庫管理:商品の在庫状況をリアルタイムに把握し、在庫の最適化を図るシステムです。適切な在庫量を保つことで、売り切れや在庫過剰を防ぎ、業績向上に寄与します。
上記のほかにも、生産管理や労務管理、勤怠管理、営業支援など、企業におけるさまざまな主要業務を支援する基幹システムが存在します。
ERPの主な機能
ERPは、企業の全ての資源を一元的に管理し、最適化するための統合的な情報システムで、主に以下のような機能を搭載しています。
- 財務・会計:企業の財務状況を把握し、経営判断の基礎となる情報を提供する機能です。財務諸表の作成、会計処理、予算管理などを行い、財務の透明性を保ちます。
- 生産管理:生産計画、生産スケジューリング、在庫管理などを行う機能です。製造業務の効率化と最適化を図ります。
- 販売・物流:注文管理、出荷管理、在庫管理などを行う機能です。顧客満足度の向上と物流コストの削減を目指します。
- 人事労務:人事情報管理、給与計算、労務管理などを行う機能です。人材の最適な配置と労働環境の改善を図ります。
これらの機能を通じて、ERPは企業のあらゆる業務プロセスを統合し、リアルタイムでの情報共有を可能にすることで、業務効率の向上や経営判断の迅速化を実現します。
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基幹システム・ERPそれぞれの導入によるメリット
基幹システムまたはERPを導入することで得られるメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
基幹システムを導入するメリット
基幹システムを導入することで、管理業務の効率化が図れます。データの入力や更新、計算等の作業が自動化されるため、業務スピードの向上や人的ミスの削減につながります。
また、業務プロセスを統一し、属人化を解消できるのもメリットです。新入社員や配属されて間もない社員でも、スムーズに業務を覚えられるようになるため、業務の標準化や品質向上が可能です。
さらに、企業全体の売上や財務状況、在庫状況などの情報を可視化できるため、経営陣やマネジメント層は正確なデータに基づいた迅速な意思決定を行えます。業務プロセスにおける無駄な作業やボトルネックも把握できるため、コスト削減に有効な施策を打てるようにもなるでしょう。
ERPを導入するメリット
ERPを導入し、企業内のあらゆる情報を一元管理することで、さまざまなメリットが得られます。
従来、各部門・部署で管理していた情報を横断的に取得できるようになるため、全社でデータを活用できるほか、部門間の連携がスムーズになります。同じデータを異なる複数のシステムに都度入力する必要がなくなり、各部署への問い合わせも減らせるため、業務効率向上や人件費などのコスト削減も実現可能です。
また、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)に関する情報をリアルタイムで把握できるのも、ERPのメリットです。経営陣が知りたい情報を視覚的に表示できるほか、ERPシステムの中にはデータ集計機能や分析機能などが搭載されているものもあります。
このように自社のあらゆる状況が可視化されることで、迅速かつ的確な意思決定や組織全体の生産性向上を実現できるため、企業競争力の強化にも大きく貢献するでしょう。
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基幹システム・ERPそれぞれの導入によるデメリット
基幹システムまたはERPを導入する場合には、メリットだけでなくデメリットも存在します。導入を検討する際には、それぞれのデメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
基幹システムを導入するデメリット
基幹システムの導入にあたって業務のオペレーションが大きく変わる場合、業務担当者からの理解を得られにくい可能性があります。システムを使いこなせるようになるまで時間がかかるうえ、不慣れな業務フローによる業務スピードの低下やミスの発生などの懸念があるためです。
このような問題を防ぐには、基幹システムの導入時には業務担当者向けに研修を実施する、業務マニュアルを作成する、トラブル発生時のサポート体制を整えるなどの準備が必要です。
また、基幹システムは基幹業務を支える重要なシステムであり、不具合や通信障害などによりシステムが停止した場合は、業務に多大な影響を及ぼすリスクがある点にも注意しなければなりません。
ERPを導入するデメリット
ERPは基幹システムと比較すると導入コストが高額になる傾向があり、提供形態によっては数千万円規模のコストがかかるケースもあります。
また、ERPは業務全体をカバーするシステムであるため、導入後の運用・保守も複雑で、専門的な知識を持つスタッフが必要です。業務内容の変化に伴いカスタマイズが必要となり、追加費用が発生することも少なくありません。
さらに、ERPでデータを一元管理するには、各部門に散らばっているデータを整理したうえでERP上に登録する必要があります。データを活かして迅速かつ的確な経営判断を実行するためには、事前に入力ルールを策定し、日々正確なデータを入力することが大切です。
基幹システムやERPを導入する際は役割の違いについて把握しておこう
基幹システムとERPは、どちらも企業の業務効率化や情報管理の一元化を実現するためのシステムですが、その役割は異なります。
基幹システムは、会計や人事、受注管理など、企業の基幹業務を種類ごとに分け、それぞれの業務の効率化を目的に導入するものです。一方、ERPは、全ての基幹システムを統合し、企業全体の情報を一元管理することを目的としています。
これらのシステムを導入する際は、それぞれの役割と特性を理解し、自社のニーズに最適なシステムを選択することが重要です。
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