人的資源とは?意味や企業における目的・重要性・課題についてを解説
人的資源とは、企業が発展していくために欠かせない経営資源の一つです。その上、近年では労働力が減少しており、人的資源の重要性はさらに高まってきています。本記事では、そんな人的資源について、意味や重要性など詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
人的資源とは?
そもそも人的資源とは何を指すのでしょうか。意味や経営資源について、そして人的資源と混同されやすい人的資本との違いを一つずつ解説します。
人的資源の意味
人的資源とは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」のヒトにあたる部分で、自社内の従業員のことをいいます。会社を構成するうえで従業員の存在は欠かせません。
従業員によって能力が異なるため、会社や部署に合った人材を確保する必要があります。このように、人的資源イコール従業員数や労働力というわけではなく、従業員それぞれの能力や価値を見極めることを含め人的資源と考えられています。
人的資源以外の経営資源
経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つに分けられます。ヒト以外の3つについて、以下の表にまとめました。
経営資源 | 内容 |
---|---|
モノ | 物的資本のこと。企業が提供するサービスや商品、そして保有する建物や設備など、企業に関わる幅広いものを指す。 |
カネ | 財務資本のこと。企業が取り扱うお金を指す。サービス・商品の開発以外に、採用や設備にも資金が必要。 |
情報 | 組織資本のこと。企業内で蓄積したデータやノウハウ、人脈や企業イメージなどを指す。扱い方によって、企業の経済活動に大きく影響を与える。 |
人的資源と人的資本の違い
人的資源と人的資本の2つは混同して使用されることも少なくありませんが、持つ意味は少々異なります。
人的資源は、人の能力や価値をふまえたものとして考えられますが、人そのものに対しても使用できます。それに対して人的資本は、人に付随する能力・スキル・知識に加え、その人がもたらす経済価値も含まれるのです。
これらは同じ意味として用いられることもありますが、それぞれの定義は正確には異なります。
人的資源の特徴
人的資源の特徴について一つずつ解説します。
育成できる経営資源
「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源の中で、資源そのものが成長できるのは人的資源のみです。
従業員それぞれに適切な研修や教育の機会を設ければ、それぞれの従業員がもたらす経済価値を高めることができます。新卒入社の社員であれば、企業が理想とする人材へとゼロから育成することも可能です。
もちろん中途社員やパートタイム労働者でも同様に、それぞれに合った教育を行い、知識や経験を積ませることで、より良い人材に成長するでしょう。
行動の自由と自律性が求められる
人的資源である従業員は、自由な行動から新たな発想を生み出す可能性を秘めています。そのため、ルールの範囲内においては、従業員の行動に自由を与えることが重要です。
ただし、企業では社のイメージや目標が設定されています。したがって、自由でありつつも社のイメージに沿い、目標に向けた行動が求められます。このように、人的資源には自由と自律性の両立が期待されているのです。
絶対的な管理手法が存在しない
ヒト以外の経営資源は、時代に合ったさまざまな管理方法が登場してきました。また、これらの管理方法は企業によっても異なっています。
しかし、従業員の感情や発想まで管理できるシステムは存在しません。このように、時代を超えても絶対的な管理方法が存在しないものが人的資源といえるでしょう。
常に変動的
人的資源は、経営資源全体を動かしているといっても過言ではありません。なぜなら、「モノ・カネ・情報」を動かすにはヒトの存在が欠かせないためです。
ヒトが変動すれば他の経営資源にも影響が出るため、人的資源は最も重要かつ変動的といえるでしょう。
人的資源を管理する目的
人的資源は、ただ数を確保すればよいわけではなく、育成・管理することが大切です。ここでは、人的資源を管理する目的について解説します。
よりマッチした人材育成の促進
人的資源は育成・成長が可能なため、企業が理想とする人物像と従業員の現状を、よりマッチさせることが可能です。従業員の育成は、従業員が既に持っている能力やスキルを軸に、背景を考えた育成が必要です。
従業員における背景には、「希望の働き方」「今後のキャリアプラン」などが挙げられます。企業と従業員の双方にとって条件がマッチすれば、人材育成が促進するだけでなく、従業員の辞職といった人的資源の喪失を防ぐことにも繋がるでしょう。
効果的な経営戦略の実現
経営戦略の実現には、経営資源のすべてをうまく活用・管理しなければなりません。ただ、人的資源がなければ経営資源を動かすことができないため、経営資源のなかでも人的資源は最も重要であるといえます。
人的資源の管理と「モノ・カネ・情報」の活用があって経営戦略の実現が可能となります。
人的資源の管理が重要視されている3つの理由
ここまでは人的資源の管理が重要であるとお伝えしてきましたが、人的資源が重要視されるのには3つの理由が考えられます。
1.最も根本的な要素で原動力となるため
人的資源は経営資源の中心であり、最も重要な存在です。人的資源の価値が高まれば、経済価値も高まるというように、企業活動における根本的な要素であるといえます。
「モノ・カネ・情報」の要素がどれだけ優れていても、それらを活用できるヒトがいなければ意味がありません。したがって、人的資源が原動力となり、企業に価値を与えることに繋がるのです。
2.人材の確保が難しくなっているため
現在日本では少子高齢化が急速に進んでいることから、労働人口の減少を引き起こしています。そのため、企業における人材確保が難しく、企業内での人材育成が求められています。
ただ、企業内で人材育成に成功しても、その人材が転職・退職などの理由で流出することも考えられます。
したがって、企業は従業員とヒアリングを行い、働き方やビジョンをすり合わせるといった人材の管理や調整が重要といえます。
3.高度な経営戦略に伴う組織戦略が必要なため
企業活動が多様化・複雑化している現在、経営戦略も高度なものとなっています。高度な経営戦略を実現するためには、それに伴う人的資源、つまり組織戦略が必要です。
もちろん、必要な人材を新たに確保することもひとつの手段として考えられます。しかし、現在の日本では人材確保が難しいため、人的資源を適切に管理し育成することが求められるのです。
人的資源を管理する際の課題
人的資源は他の経営資源と比べ、確立された管理方法が存在しないため、管理が困難とされています。以下で、人的資源の管理における課題を解説します。
従業員との価値観の違い
人はそれぞれの価値観を持ち合わせており、企業が従業員に与えた業務などが下記のような理由から受け入れられない可能性もあります。
- 得意な仕事でなかった
- やりたくない仕事だった
- 管理がきつすぎて自由に行動できない
したがって、人的資源の管理には、「従業員それぞれの資質を考慮した育成」「従業員の主体性を奪わない管理」が求められるとともに、ときにはなぜ従業員にその業務を与えたのか理解を得るための説明も必要になってくるでしょう。
適切な人事評価や人材配置の難しさ
適切な人材評価・人材配置を行うためには、ひとつの方法にとらわれてはいけません。人的資源は、適材適所でなければ経済資源をうまく活用できない可能性があります。
ただ、人的資源には限りがあるため、適切な評価や配置が困難であると捉えられているのです。
従業員の人間性が軽視されてしまう可能性
経営戦略の実現が優先されることで、人的資源の管理がいい加減になれば、従業員が疲弊してしまうことにも繋がりかねません。
また、管理者と従業員のパワーバランスが崩れると、従業員が意見や不満を伝えられない状況に陥ることも考えられます。こういった状況が続けば、人的資源の喪失が懸念されるため、適切な管理や調整をすることが重要といえます。
データとして定量的に把握することが難しい
人的資源をデータ化したり、システム上で管理したりすることは困難で、具体的な数字や数量で表せるものではありません。そのため、適切に管理することが難しいといわれており、目標達成に向けた具体的なマネジメントが必要となります。
人的資源を活用するための制度
人的資源をうまく活用することを目的とした制度も存在します。それぞれの仕組みを理解し、自社に合った制度を導入しましょう。また、以下の制度は一つだけでなく、2つ以上を併用することでさらなる効果も期待できます。
雇用管理制度
雇用管理とは、採用や異動などを含む人事の内容です。以前までは新卒から定年までの雇用が主流でしたが、現在は中途入社や転職が当たり前の時代となり、従業員の雇用形態もさまざまです。
これらの変化に伴い、雇用管理も複雑化しているため、多様な雇用管理制度が求められています。制度の具体的な内容は、各企業の経営戦略や時代の変化を意識して検討することが大切です。
人材育成制度
労働人口の減少により人材確保が難しくなっているため、企業内でいかに人材を育成できるかがカギを握っています。
経営戦略の実現に潜む課題を挙げ、必要な人材像を想定し、それに合わせた研修や育成が必要です。時代や経営戦略に応じて、人材育成の方法にも変化をもたらしましょう。
人事評価制度
人材資源を有効活用するには、適切な人事評価が重要であるとお伝えしました。適切な人事評価をするためには、ある一定の基準を設けることが重要です。以前の日本では、年功序列という評価制度が定着しており、若者が評価されない風潮がありました。
今の時代に能力が高いにも関わらず、若いという理由で評価されなければ、人的資源の喪失につながる恐れがあります。従業員のモチベーションを高めつつ、透明性の高い公平な人事評価をすることが大切です。
報酬制度
報酬制度は人事評価制度と深く関わっており、人事評価が高ければ対応できる業務も増えるため、報酬も上がるでしょう。
これまでの年功序列制度では、長く働けば評価や報酬がアップするため、従業員側は良くも悪くも安心感を持ち、モチベーションの向上には繋がりづらい状況であったといえるでしょう。
これからの時代は、人事評価と報酬をどのように結びつけるかを公正かつ客観的に検討することが重要となります。
福利厚生制度
福利厚生が充実していれば、それだけ従業員の働きやすさにつながります。そのため、人的資源の活用には、福利厚生の充実度を高めることが大切です。福利厚生には、主に以下の内容があります。
- 健康保険
- 雇用保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 労災保険
- 慶弔金
- 家賃補助
これら以外にも従業員にとって有益な仕組みなどを提供することで、人的資源の確保にも繋がるでしょう。福利厚生の内容は企業ごとに定めることができるため、自社独自の福利厚生を検討してみるのもよいかもしれません。
労使関係制度
労使関係とは、労働者と使用者の関係のことです。これまで紹介してきた制度を導入するには、労使協定や労働組合が介入する場合があります。そのため、企業側が自由に制度を作ったり導入したりすることが難しいケースも考えられます。
このように、制度の導入にもいくつかの課題が想定できるため、労働者と使用者の役割を明確にすることを目的とした労使関係制度の導入がおすすめです。
人的資源を有効活用するために必要な日本企業の施策
では、日本企業が人的資源の有効活用に向けて必要な施策をご紹介します。
時代に合った雇用制度の実施
雇用管理とは、採用や異動などを含む人事の内容です。以前までは新卒から定年までの雇用が主流でしたが、現在は中途入社や転職が当たり前の時代となり、従業員の雇用形態もさまざまです。
この変化に伴い、雇用管理も複雑化しているため、多様な雇用管理制度が求められます。制度の具体的な内容は、各企業によって時代の変化や経営戦略を基に検討することが必要です。
充実した教育制度
現在の日本企業では、社内での人材育成が求められています。人材教育を制度化することで、一定の人的資源を確保することはできるでしょうが、一つの教育制度だけで、従業員それぞれの能力を活かすことは難しいでしょう。
したがって、それぞれの従業員に適切な研修や教育体制を整えることが良質な人材資源の創出に繋がります。
人事評価制度の改善
人事評価制度は、従業員を客観的かつ公正に評価し、生産性の向上や企業の目標達成のためにあるものでなければなりません。
また、人事評価によって報酬が左右されるため、従業員にとっては適切な人事評価がモチベーションを維持することにも繋がります。このように、人事評価制度を改善し整えることが、人的資源を確保し、有効活用することへと繋がります。
適切な人材配置
人には向き不向きがありますし、すべての従業員が希望する仕事に就けるということはありません。与えられた中で努力をし、得られる力もあります。
しかしながら、明らかにその従業員に向いていない仕事を与えることで、働く意欲の低下や自信の喪失、そして人材の喪失に繋がるケースもあります。
働く人の能力や性格などの要素から判断し、個々に合った人材配置を検討することが理想です。適材適所に人が配置されていれば、生産性・売り上げの向上、そして人的資源の有効活用にも繋がります。
適切な人事評価
適切な人事評価が従業員のモチベーションを向上させ、経済価値ももたらすことにもつながります。以前主流だった年功序列の風潮や、主観的な判断などから、従業員が納得感の低い評価に不満を持つと、人材を喪失する可能性もあります。
そのため、成果主義である現代に合わせた偏りのない人材評価制度を取り入れ、働く人が納得する人事評価を行わなければなりません。
人的資源を管理・活用するために役立つシステム
人的資源を管理することは容易ではありませんが、業務の一部をシステムに任せ、業務を効率化することが可能です。
貴重な人的資源を確保し有効活用するために、自社に合ったシステムの導入を検討することも有効でしょう。
人事管理システム
人事管理システムでは、従業員に関するさまざまな情報を管理できるツールで、下記の内容を主に管理できます。
- 基本情報
- 配属
- 給与
- 勤怠管理
人事管理システムは蓄積されたデータから、高い精度で従業員を評価するツールです。システムが一元管理されて主観が入らないため、働く人も冷静に評価を受け入れられるでしょう。
タレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムでは、働く人の能力やスキルを管理し、客観的かつ総合的に活用できるツールで、下記の内容を主に管理できます。
- 基本情報
- スキル
- 職歴
- 経験
- 資格
- コミュニケーション能力
従業員の素質や能力を一元管理できるため、経営戦略に沿って適材適所の人材配置へと繋げることが可能です。また、従業員の持つパフォーマンスを引き出せる可能性もあり、限られた人的資源を有効に活用するためには、必要なシステムといえるでしょう。
人的資源の重要性を理解して適切な管理を実現しよう
企業活動をするうえで、人的資源は経営資源の中で最も重要な資源といえます。そのため、人的資源を活用し、経営戦略に沿って「モノ・カネ・情報」を動かさなければなりません。
しかし、労働人口の減少により、人的資源にも限りがあります。したがって、人的資源の重要性を理解し、適切な管理を必要とします。
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