メンタルヘルス・マネジメント®検定試験とは?難易度や合格率・仕事での活用方法
企業で働く従業員のメンタルヘルスを管理するために、必要な知識を習得できるのがメンタルヘルス・マネジメント®検定試験です。今回は、メンタルヘルス・マネジメント®検定試験について、試験の難易度から合格率、仕事での活用方法まで詳しく解説します。
目次
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験とはどのような資格か
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験は、大阪商工会議所と施工商工会議所が主催する資格試験です。
この試験は、社員に起こる可能性のあるメンタルヘルスの不調に対応したり、メンタルトラブルが生じないように予防策を講じたりする基礎知識の習得を目的としています。
その背景としては、仕事や職業生活にストレスを抱いている人が増加していることが挙げられるでしょう。厚生労働省がおこなった調査でも、令和3年の時点で、53.3%の人が仕事・職業生活にストレスを感じていると報告されています。
このようなストレスが職場の活気を失わせたり、社員の休職や離職へとつながったりすることは、現代の日本社会が抱える問題のひとつです。
企業の成長に、社員が心身ともに健全に働けることは、必要不可欠な条件であり、メンタルヘルスへの取り組みが重要視されるようになってきました。
心の健康管理では、自分自身でストレスあるいはその原因に対応することも大切です。同時に企業にも、社員の健全なメンタルヘルスを守る義務があります。その知識やスキルを体系的に学べるのが、メンタルヘルス・マネジメント®検定試験です。
[出典:厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」]
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メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の受験コース
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験には、以下の3種類のコースがあります。
- Ⅲ種(セルフケアコース)
- Ⅱ種(ラインケアコース)
- Ⅰ種(マスターコース)
Ⅲ種(セルフケアコース)
Ⅲ種(セルフケアコース)は、一般社員を対象とした受験コースです。
社員一人ひとりが、自身のストレスを自覚してメンタルヘルスの不調にいち早く気づき、対策を講じられるようになることが目標です。対策では、必要に応じて助けが求められるようになることも目指します。
職種や業種、年齢などを問わず、働くすべての人におすすめのコースです。
Ⅱ種(ラインケアコース)
Ⅱ種(ラインケアコース)は、企業の管理職を対象とした受験コースです。
このコースでは、自身が統括する部署に所属する部下のメンタルに配慮し、不調に気づいたときに、適切な対処ができるようになることを目指します。
管理職向けのコースですが、上司や企業のメンタルヘルス対策が理解できるので、一般社員にもおすすめです。
Ⅰ種(マスターコース)
Ⅰ種(マスターコース)は、人事や労務担当、経営層などが対象の受験コースです。
企業の方針や人事戦略をもとに、メンタルヘルスケア対策の計画を立案できるようになること、産業保健スタッフなど外部の専門機関とも連携できるようになることを目指します。
さらに、社員向けにメンタルヘルスケア講座などを企画し、実行をサポートすることも、目的の一つです。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の難易度と合格率
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験には、3種類のコースがありますが、気になるのは難易度と合格率ではないでしょうか。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の各コースの難易度と合格率を見ていきましょう。
各コースの難易度
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験における各コースの難易度について解説します。
●Ⅲ種
Ⅲ種(セルフケアコース)では、メンタルヘルスケアの意義やセルフケアの重要性など、メンタルヘルスの知識を得る上での基礎的な問題が出題されます。一般常識に通じる問題もあり、ほかの2つに比べると、易しいレベルといえます。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の公式テキストを読み、問題演習をすれば、合格可能と考えて差し支えないでしょう。
●Ⅱ種
Ⅱ種(ラインケアコース)では、メンタルヘルスに関する管理監督者としての役割、社員への対応など、社内全体に目を配った内容が出題されます。法律や制度で定められた細かい数値が問われることもあるため、事例に関する深い理解が必要です。難易度は、比較的難しいといえます。
●Ⅰ種
Ⅰ種(マスターコース)では、メンタルヘルスケアにおける人事労務部門の役割、人事労務管理スタッフに求められる能力など、企業運営を基盤とした幅広い知識が問われます。
出題形式も、Ⅱ種とⅢ種はマークシート形式であったのに対し、Ⅲ種は、マークシートと論述問題です。
Ⅰ種に合格するためには、正しい知識を確実に身につけている必要があり、難易度はかなり高いといってよいでしょう。
各コースの合格率
次に、各コースの合格率について見ていきましょう。
●Ⅲ種(セルフケアコース)
試験回 | 合格率 |
第34回(2023年3月19日) | 79.3% |
第33回(2022年11月6日) | 69.4% |
第32回(2022年3月20日) | 64.4% |
第31回(2021年11月7日) | 71.2% |
第30回(2021年3月21日) | 81.9% |
第29回(2020年11月1日) | 86.4% |
第28回(2020年3月15日) | 公開試験中止のためデータなし |
第27回(2019年11月3日) | 66.7% |
第26回(2019年3月17日) | 79.7% |
第25回(2018年11月4日) | 85.5% |
Ⅲ種のセルフケアコースは、合格率が65%から85%程度と、比較的高い傾向にあります。
合格基準は、100点満点中70点以上です。
●Ⅱ種(ラインケアコース)
試験回 | 合格率 |
第34回(2023年3月19日) | 54.1% |
第33回(2022年11月6日) | 58.2% |
第32回(2022年3月20日) | 69.8% |
第31回(2021年11月7日) | 46.4% |
第30回(2021年3月21日) | 68.2% |
第29回(2020年11月1日) | 56.5% |
第28回(2020年3月15日) | 公開試験中止のためデータなし |
第27回(2019年11月3日) | 43.3% |
第26回(2019年3月17日) | 48.7% |
第25回(2018年11月4日) | 65.1% |
Ⅱ種(ラインケアコース)は、Ⅲ種のセルフケアコースと比較すると合格率は下がるものの、おおむね50%から60%の受験者が合格しています。
試験の傾向を把握し、適切な対策を取れば十分に合格可能なコースといえるでしょう。
合格基準は、100点満点中70点以上の得点となっています。
●Ⅰ種(マスターコース)…実施は年に1回、11月のみ
試験回 | 合格率 |
第34回(2023年3月19日) | - |
第33回(2022年11月6日) | 17.6% |
第32回(2022年3月20日) | - |
第31回(2021年11月7日) | 19.8% |
第30回(2021年3月21日) | - |
第29回(2020年11月1日) | 21.3% |
第28回(2020年3月15日) | - |
第27回(2019年11月3日) | 15.6% |
第26回(2019年3月17日) | - |
第25回(2018年11月4日) | 20.2% |
Ⅰ種(マスターコース)は、合格率が20%前後と、合格率がかなり低くなっています。それだけ難易度が高いといってよいでしょう。
試験の実施は、年に1回のみで、合格ラインはマークシート問題と論述問題の合計で105点以上となっています。
ただし、論述問題で25点以上の得点が必要です。
[出典:大阪商工会議所「結果・受験者データ | 試験のご紹介」]
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験を仕事で活用する方法
取得したメンタルヘルス・マネジメント®検定試験の資格は、様々なシーンで活用することができます。
職場環境の改善に活用する
部署内でメンタルヘルスの不調者が出ると、周囲の人も気遣わなければならず、職場の活気低下が懸念されます。該当社員の欠勤や遅刻が増えると、ほかの社員の不安や不信感を招くこともあるでしょう。
しかし、検定試験を取得していれば、部署でメンタルヘルスケアの研修を実施したり、面談で社員のメンタル状態を把握したりなどの対応が可能です。事前の対処は、本人のメンタルヘルスによい影響があるだけでなく、職場環境の改善にもつながるでしょう。
また、上司が部下のことを気にかけてくれているとわかれば、部署全体の士気向上にもつながるはずです。
部下のサポートに活用する
職場では、部下が仕事や環境に強いストレスを抱えていたり、日常業務や人間関係などで悩んでいたりすることも珍しくありません。
そのようなときも、検定試験でメンタルヘルスに関する正しい知識や対処方法を身につけていれば、声がけをするなど、部下の状態が深刻になる前に適切な対処ができるでしょう。
キャリアアップにつなげる
自身のメンタルヘルスケアだけでなく、同僚や部下、企業全体のメンタル状態をマネジメントする能力が身につけることは、企業内でのキャリアアップにもつなげられます。
メンタルヘルス対策を企画し、実践していけば、社内でメンタルヘルスをリードし、職場に活気をもたらす存在になれるでしょう。メンタルに不調を抱える人にとって、外部の心理カウンセラーや産業医より親近感があり、業務に関する相談がしやすい点もポイントです。
自身のメンタルケアに活かす
心の不調は、自分では気づきにくいものです。しかし、メンタルヘルスの知識を身につけていれば、早いうちに気づけ、対処できるようになります。休職や離職を回避して、乗り切っていくことができるでしょう。
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メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の勉強方法
検定試験を受けるにあたっては、どのような勉強法があるのでしょうか。主に、以下の3つが挙げられます。
- 独学で理解を深める
- 講座を受講する
- アプリを活用する
それぞれ詳しく解説します。
独学で理解を深める
各コースともに公式のテキストが出版されており、テキストを使えば働きながらの独学が可能です。
テキストは公式なので、試験範囲の内容が的確にまとめられています。メンタルヘルスケアの定義など、専門的な知識も効率的に習得できます。
公式テキストに準拠した過去問題集も市販されているので、実際の試験時間に合わせて取り組めば、より効果的な学習ができるでしょう。
講座を受講する
講座を受講することも方法のひとつです。
講座には、メンタルヘルス・マネジメント®検定試験公式の講座、ビデオブースを使った通学講座、通信講座、オンライン講座などがあります。
自身の働き方やライフスタイルに合わせて、選んでみてください。
アプリを活用する
試験対策としては、アプリの活用もおすすめです。
スマートフォンやタブレット、PCなどインターネット環境が整っていれば、いつどこにいても学習できます。
スマートフォンでの学習なら、通勤時間を使っての勉強も可能です。アプリならではの工夫もあるので、短期集中で資格取得を目指したい社会人向けの勉強法ともいえます。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験を仕事に役立てよう
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験は、自身や職場の同僚のメンタルヘルスに対応する能力が身につく資格です。
予防策を講じるための基礎知識が得られるだけでなく、職場環境の改善にも役立ちます。
仕事や職業生活にストレスを感じる人が増えている現代社会において、個人のメンタルケアだけでなく、部署、ひいては社内全体に配慮することは欠かせません。
メンタルヘルス・マネジメント®検定試験の資格を活用し、自分自身の仕事にも職場のムード作りにも生かしていきましょう。
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