マーケティングオートメーション(MA)にAIがもたらす可能性や活用法とは?
マーケティングオートメーション(MA)にAIを用いると、どのような可能性が期待できるのでしょうか。本記事では、AIが使われたマーケティングオートメーションツール(MAツール)にできることや、実際の活用例、そしてAIがMAツールにもたらす可能性について詳しく解説します。
目次
MAツールで活用されている予測系AIとは
予測系AIとは、膨大なデータをもとにさまざまな予測が行えるAIのことです。ビジネスチャンスの獲得に繋がるとして、マーケティングオートメーション(MA)の分野でも取り入れられており、AIにマーケティングの手法を覚え込ませて、需要や顧客行動などを予測させています。
従来の予測は、それを行う人の長年の経験や勘といった、属人的な手法で行われてきました。そのため、予測を行う人が自身の頭の中に蓄積してきたデータに左右されるほか、担当する人によって予測がバラつくことになりかねなかったのです。
さらに、その蓄積されたデータを他人と共有することが難しく、より属人化が進んでしまうという課題がありました。
属人化された予測からAIによる予測に置き換えることでデータが一元化されます。そして、膨大なデータを一カ所に集めることにより、各担当者が同じデータを活用することが可能です。
特筆すべきなのは、膨大なデータを蓄積し、日々予測を繰り返すことでAIが学習し、進化を繰り返していく点です。AIの学習により、同じAIを使う全員がより精度の高い予測結果を得られるため、ビジネスの躍進に寄与してくれると期待できます。
AIが搭載されているMAツールにできること
AIを搭載したMAツールの活用により、膨大なデータを分析し、求める情報について最適な結果を予測することが可能です。
マーケティングでは顧客データが主ですが、例えば顧客の住所といった個人情報だけでなく、検索ワードや閲覧した商品、サイトへ訪れる時間帯といった個人の行動や嗜好に関するデータも個人データとして取り扱われます。
これらのデータを収集・蓄積して一元化することにより、膨大なデータの中から関連があるデータを抽出し、目的となる情報を予測できるのです。この点がMAツールでAIを使う大きなメリットだといえるでしょう。
例えば、AIで分析・予測したデータを以下のように活用することが可能です。
- 顧客に合った商品や記事をレコメンドする。
- 最適なメール配信のタイミングを察知する。
- コンテンツの改善案を出す。
以下では、AI予測ができるMAツールの活用事例について、さらに詳しく解説します。
(1)顧客に合った商品や記事をレコメンドする
AI予測を活用することで、顧客が購入した商品や閲覧した商品といった情報から顧客の嗜好を分析し、次の行動を予測できます。また、検索したワードを分析することで、顧客がどのような情報を必要としているのかについても予測することが可能です。
これらの予測をもとに、それぞれの顧客に合った最適な商品情報や、顧客が必要としている情報が掲載された記事などを提供できるようになります。つまり、常に顧客が必要としている情報を提供し続けられるというわけです。
顧客が必要な情報が常に手に入るサイトだと認識してくれれば、「何か探したい情報があるときは、とりあえずこのサイトで探す」というルートを作ることができます。
常に顧客が利用してくれることで、継続的にデータが蓄積されていくので、さらにAIが学習して進化するという良いサイクルが生まれることもメリットです。
また、顧客から必要と思われればサイト離脱率を低くすることが可能となり、サイトのクオリティ向上にも繋がるといえるでしょう。
(2)最適なメール配信のタイミングを察知
顧客がいつサイトを訪問しているか、時間や曜日などの情報を収集できれば、より細かい行動分析が可能となります。
情報収集の精度によっては、どの日にどのような商品を購入することが多いか、といった行動まで分析できるので、ぜひマーケティングに活用したいところです。
こうした行動データを蓄積して活用することにより、顧客がサイトを訪問するタイミングやメールを見るタイミングを、AIによって予測することもできます。
また、送ったメールの開封率に関するデータを分析することで、どのようなメールが顧客に開封してもらえるのか、有効性もわかります。
顧客の属性データだけでなく、まとまった顧客の行動分析が可能になるため、例えばいつイベントを開催すると来てもらえるか、収益に繋がるかということもまた、AIによって予測することも可能です。
これらのデータをうまく関連付けて分析することで、最適なタイミングで最適なメール配信が行えるでしょう。
(3)コンテンツの改善案を出す
AIを使ったMAツールは、顧客への案内ができるだけでなく、サイト運営の改善やサイト構築にも役立てることが可能です。
例えば、顧客がどのようなキーワードで検索しているか分析することで、顧客が何を求めているのか、という市場予測が可能になります。
また、サイト内でどのようなコンテンツが読まれているか、ページの滞在時間を分析することで、顧客の興味やトレンドを予測し、次に制作すべきコンテンツの検討にも繋げられるでしょう。
平均滞在時間が短いと感じた場合は、コンテンツがしっかり読まれていない可能性もあるので、コンテンツ自体の見直しというアクションのきっかけもつかめます。
このように、データの分析する角度を変えるだけで分析・予測される結果も変わってくるのです。分析結果を活用することはサイトの改善にも繋がり、さらにはサイト運営者がコンテンツやサイト構築の方向性などの改善点を予測するためにも役立ちます。
主要なMAツールで具体的に見るAIの活用事例
MAツールが注目されるようになってすでに数年が経ちましたが、現在は特にMAツールでAIを活用することに注目が集まっています。
従来、人の手と頭脳でデータ分析していた工程をAIに肩代わりさせることで、より精度が高い予測を誰でもできるようになりました。しかも、機械が作業するので人間が行うより速く正確に予測でき、作業時間の短縮・効率化に繋がるというメリットもあります。
さらに、AIが分析作業からレポートの作成まで、自動もしくはほぼワンステップで行うため、作業人員の削減が可能となり、その点も注目される要因です。
ビッグデータの活用が叫ばれて久しい昨今、MAツールにおけるAI活用もまさにビックデータの活用の一例だといえるでしょう。ここから、実際に各メーカーが提供しているMAツールとAIの活用事例をご紹介します。
(1)b→dash|次回施作の提案や改善案を提示
b→dashは、株式会社フロムスクラッチが提供するMAツールであり、AIを活用して新しい取り組みを行うツールです。従来のMAツールは、顧客を集める点で力を発揮していました。しかし、b→dashでは、対応できる分野をさらに増やす機能を展開しているのです。
b→dashは、予測によって仮説を生成する機能、施策を行った結果を検証するという、改善提案の部分にAIを活用し、利用する企業の集客・増益の一助を担っています。集客から始まり、商品の販売促進、売上・顧客の管理といった分野にまで範囲を拡大している他、施策や改善の提案までAIを活用して対応できる範囲を広げているのが大きな特徴です。
AIを活用できる範囲を広げ、まさにAIの得意分野への活用を可能にしているのがb→dashであり、今後の機能展開も注目を集めています。
(2)MAJIN|膨大なデータをAIがスコアリングし、関心度が明確に
MAJINは、株式会社ジーニーが提供するMAツールであり、「AIスコアリング」という機能が大きな特徴です。この機能により、過去にコンバージョンした顧客の膨大なデータを、行動や属性といった評価へと数値化する作業を効率化できます。
スコアリング作業は、顧客の数が多いほど莫大な作業工数がかかるため、長年マーケティング担当者を悩ませてきました。MAJINは、そんなスコアリング作業について、AIを用いて集計・分析し、評価工程を経て、過去にコンバージョンした顧客データのスコアリングまで一貫してできるのです。
AIによるスコアリングの自動化により、見込み客が何に関心を持っているのかマーケティング担当者が視覚的に理解することができます。その結果をもとに、見込み顧客へのアプローチ計画を立てることが可能です。
一連のスコアリング作業にかかっていた手間を省けるので、マーケティングや営業担当者が、時間をより重要な業務に割けることも、MAJINの大きなメリットです。
(3)HITACHI|シナリオ設計を自動化
HITACHIが提供するのは、MAツールではなく、MAのシナリオを自動で設計してくれるサービスです。
従来は、自社で設計した販促シナリオに従って分析や予測を行うためにMAツールが使われてきました。しかし、HITACHIのサービスでは、販促にとって重要なシナリオ設計自体を、AIの活用によって完全に自動化している点が大きく異なります。
シナリオ設計は非常に重要ですが、専門的な知識が必要であり、さらに労力がかかる作業です。AIによる自動化で、より効果的なシナリオを自動設計してもらう、あるいは蓄積したデータから他企業のKPIの要素を参考に自社にフィットしたシナリオを提案してもらうことなどが可能となりました。
また、日々の運用の中でAIが学習し進化を続けていくことで、販促シナリオ設計の精度を継続的に上げることも可能です。シナリオによる販促効果の評価および改善を継続的に行うことができるため、より高い販促効果を期待できるでしょう。
(4)Pardot|ROIを分析
Pardotは、セールスフォース・ドットコムが提供するMAツールであり、同社が提供するSFAツールと連携してマーケティング業務をより効率化できる仕組みです。
Pardotは、サイトへの訪問履歴やメールの開封率などの行動データをもとに、AIを活用して分析・スコアリングを行い、見込み顧客を評価します。Pardotの強みは、スコアリングした見込み客の情報をSFAツールに連携できることです。そうすることで、営業担当者が見込み客に対する的確なアプローチやフォローアップを行うことができ、成約への足がかりを構築できます。
また、AIによってマーケティングキャンペーンの効果を分析することで、ROI(費用対効果)を明確にし、キャンペーンや販促の最適化が可能です。結果的にコスト削減にも繋がり、より販促効果の高いキャンペーンを立案できるでしょう。
MAツールとSFAツールが連携している点は、マーケティングにおいて大きな強みであり、大きな効果を期待できます。
(5)AIマーケティングオートメーションツール|自動でパーソナライズされたマーケティングメールを配信
AIマーケティングオートメーションツールは、SREホールディングス株式会社とそのAI子会社であるSRE AI Partners株式会社が提供するMAツールです。もともとは不動産業界向けに開発されましたが、他の業界でも活用されるようになりました。
このMAツールの大きな特徴は、顧客一人ひとりに対して、パーソナライズされたマーケティングメールを配信できる点にあります。
例えば、不動産業界においては、見込み客に対して希望する物件に極力近い物件を紹介することが、成約への大きな足がかりだといえるでしょう。
また、希望に近い物件を継続的に紹介できれば信頼関係構築に繋がり、さらには顧客の獲得に繋がるため、的確な物件を探し出して紹介することは非常に大変重要なのです。
AIマーケティングオートメーションツールは、AIの活用により見込み客の希望に対して的確な物件を探し出すことができ、結果をパーソナライズされたメールの形で見込み客に配信できます。また、蓄積されてた顧客情報や分析結果を、営業担当者が管理できるので、確実なフォローアップも可能です。
AIがマーケティングオートメーションを発展へ導く
マーケティング分野において活用されてきたAIには、今後さらに大きな可能性があると期待されています。すでに成果をあげているAIですが、対応できる分野を拡大するべく研究されており、マーケティング施策や他のビズネス分野にも活用される可能性が高いといえるでしょう。
例えば、広告のコピーやWebデザインといったクリエイティブな分野での活用が期待されています。過去の広告やデザインのスコアリングを行い、データを蓄積して顧客を引き寄せるコピーやデザインの分析・予測を行うことも可能です。
最終的な決断とアクションは人間が行うことに変わりはないと予想されていますが、AIを活用して自動化を実現することにより、業務効率が各段に改善されることは間違いありません。
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