生産管理システムを自作する3つの方法|自作するメリットや開発の流れ、注意点を解説

製造現場の業務を統合的に管理する「生産管理システム」。既に多くのパッケージ型システムが運用されていますが、コストが高額になるなどの課題もあります。本記事では、生産管理システムを自作する3つの方法を紹介します。自作するメリットや注意点なども解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
生産管理システムを自作する3つの方法
生産管理システムは、自作することも可能です。ここでは、どのような方法があるのか詳しく解説します。
Excelで作成する
Excelは手軽に生産管理システムを自作できる方法のひとつです。その柔軟性と機能の豊富さにより、生産管理システムを自作する際の基盤としても使用されます。
表計算機能やマクロ、VBAを駆使することで、在庫管理や生産スケジュールの調整、データ分析などの基本的な生産管理業務を効率的に行うことが可能です。ただし、データ量に上限があり、データが増えてくると動作が遅くなる点がデメリットです。そのため、小規模な業務や初期の段階でのシステム構築におすすめの方法といえるでしょう。Excelの
Accessで構築する
Accessは、Microsoft Officeの一部として提供されるデータベース管理システムです。テンプレートが充実していて、Excelのように一からシステムを構築する必要はありません。
また、入力ミスが起こりづらく、システムエラーなどを防ぎやすいのもメリットのひとつです。ただし、データベースに関する知識が求められるため、誰でも扱えるわけではない点には注意しましょう。また、複数人で同時編集を行うと動作が遅くなりやすいという特徴もあります。
プログラミングで開発する
柔軟性の高いシステムを自作したい場合は、プログラミングで開発するのがおすすめです。PythonやJava、C#などを使用して、企業の独自のニーズや要件に対応したシステムを作成することができます。
この方法は、大規模なデータの取り扱いや、複雑な業務フローが必要となる企業に適しているといえるでしょう。一方、プログラミングに関する知識を持つ人材でなければ自作することは難しく、多くの時間を要する傾向にある点には注意が必要です。
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生産管理システムを自作するメリット
ここでは、独自の生産管理システムを構築することで得られるメリットを紹介します。
費用を抑えられる
生産管理システムを自作する大きなメリットの一つは、生産管理システムの導入に必要なコストを抑えられる点です。
市販の生産管理システムを導入する際には、ライセンス料や更新費用、カスタマイズにともなう追加費用などが発生します。一方で、自作のシステムであれば、継続的なライセンス料を支払う必要はありません。また、保守やメンテナンスも自社で行うため、トータルコストを抑えたい企業におすすめの方法といえるでしょう。
カスタマイズがしやすい
生産管理システムを自作するもう一つのメリットとして、カスタマイズのしやすさが挙げられます。市販の製品では、特定の業務フローや要件に完全に適合させるためのカスタマイズが難しく、そのためのコストもかかることが一般的です。
しかし、システムを自作すれば、企業の具体的なニーズや変化する環境に対応するカスタマイズを自在に行うことができます。これにより、業務効率の向上や迅速な意思決定が可能となるでしょう。また、プログラミングで開発すれば、機能だけでなくデザインなども自由に作成できます。
変更・修正がいつでもできる
自作の生産管理システムであれば、必要に応じてシステムの変更や修正が自由にに行えます。市販のシステムを利用する場合、変更する内容によっては時間がかかったり、一定の制約が存在することがあります。
一方、自作システムであれば、企業の業務環境の変化や新しい要件に素早く対応することが可能です。また、外部ベンダーに依存することなく変更や修正が行えるため、運用コストを大きく削減できるでしょう。
生産管理システムを自作するデメリット
生産管理システムを自作するのは、メリットばかりではありません。自作を検討している場合は、デメリットについても把握しておきましょう。
専門知識や技術が要求される
自作の生産管理システムを構築する場合、その開発や運用には専門的な知識や技術が不可欠となります。そのため、プログラミングやデータベース設計などの知識を持つ社員の確保や育成が必要です。
多くの人が使用できるExcelで開発する場合であっても、マクロやVBAといった技術が求められます。また、自作することで管理業務の属人化が進むことも考えられるでしょう。担当者の異動や退職によって、メンテナンスなどが行えなくなるリスクがある点には注意が必要です。
定期的なメンテナンスが必要になる
自作の生産管理システムを運用するには、定期的なメンテナンスが不可欠です。市販のシステムは更新やサポートをベンダーに任せることができますが、自作のシステムの場合は自社で行う必要があります。
システムのバグ修正や新しい機能の追加、既存機能の最適化など、多岐にわたるメンテナンス作業を行わなければなりません。そのため、専門的なスキルを持つ社員の配置が必要になるでしょう。自社に十分なリソースがないのであれば、既存の生産管理システムを利用する方がコスト面においても優れているかもしれません。
システムの利便性に欠ける場合がある
自社で生産管理システムを作成した場合、市販の製品と比較して利便性に欠けていると感じることもあるでしょう。市販のシステムは、ユーザーのフィードバックなどに基づいて洗練されたインターフェースや機能が提供されています。
とくにExcelやAccessで開発を行った場合、業務で使用するには機能的に不十分なケースもあるでしょう。また、セキュリティ面でも不安が残ります。ファイルは誰でも閲覧可能なため、操作履歴の管理が困難になったり、破損やデータ消失といったリスクも考慮する必要があります。
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生産管理システムを自作する際の開発の流れ
ここからは、独自の生産管理システムを自作する際の一連の流れを解説します。
導入の目的を明確にする
生産管理システムの自作を開始する前に、導入の目的を明確にしましょう。目的が明確であれば、開発の方向性や優先順位を適切に定めることが可能となり、無駄な労力やコストを削減できます。
この際、必要な機能についても洗い出しておくことが大切です。まずはじめに、受注管理・発注管理・在庫管理・生産計画といった大まかな機能を選定してから、より具体的な機能を整理していきましょう。
システムを設計する
導入目的が明確になったら、システム設計の段階に入ります。最初のステップでは基本設計を行い、システムに実装する機能を仕様書にまとめていきましょう。この際、ほかの部門とも協力しながら機能や操作性について洗い出すようにしてください。
次に、基本設計で決めた仕様を実現するための内部の設計を行います。これは詳細設計とも呼ばれ、開発担当者に実装してもらう指示書のことです。これらの内容をもとに、Excel・Access・プログラミングのどの手法を利用して開発を行うかも決めておくとよいでしょう。
システムを開発する
開発手法が定まったら、詳細設計をもとに担当者が開発を行います。開発期間を長期化させないためにも、スケジュール通りに進行できているかを確認しながら進めることが大切です。
システムの規模が大きい場合、少人数のチームで開発を行うのは困難になります。モジュールごとにチーム分けして開発を行うことで、一人あたりの負担を軽減できるでしょう。
動作テストをする
システムの開発が終わったら、動作テストを行います。設計のとおりに画面や機能が動作しているかチェックしましょう。テストを行う際は、開発者ではない第三者が行うことが大切です。
開発者がテストを行うと先入観でテストを進める可能性があります。そのため、現場でシステムを使用する社員が利用者目線でテストを行うのがおすすめです。
実地テストをする
動作テストが完了したら、実際の現場で試験運用を行います。複数の社員に操作してもらったり、あえて高負荷な状態にして処理速度を計測することで、現場で問題なく使用できるかを確認しましょう。
実地テストでは、機能面だけでなく当初の目的を果たせるかどうかの見極めも重要です。少なくとも1ヶ月程度は様子を見ながら試験運用を行い、有用性が見込まれるようであれば、ほかの部署にも展開していきましょう。
生産管理システムを自作する際の注意点
ここでは、生産管理システムを自作する際の注意点を紹介します。せっかく手間やコストをかけたシステムを失敗に終わらせないためにも、以下のポイントに注意するとよいでしょう。
利用者の目線になって開発する
システムを開発する際は、実際の利用者の視点を取り入れることが重要です。具体的には、以下のポイントについて配慮するとよいでしょう。
- 誰にでも操作できるか
- 大きな作業変更はないか
- 使用する端末の耐久性
システムを導入しても、専門知識が必要だったり作業がスムーズに行えなければシステムは定着しません。また、業種によっては粉じんなどで端末が汚れることも考えられるので、端末の耐久性についても考慮して開発を行いましょう。
スケジュールに余裕を持たせる
システム開発の過程には、以下のような予期せぬ障害や変更が常に伴います。
- 異動や転職による開発メンバーの欠員
- 急な仕様変更
- 必要な備品の納品遅れ
上記のようなトラブルが起こることを想定し、スケジュールや人員に余裕を持たせておくことが大切です。
開発のノウハウを共有する
システムを開発したら、開発のノウハウを共有しておく必要があります。これは、システムの管理業務を属人化させないためにも重要です。以下のポイントを意識して、ノウハウを具体化するとよいでしょう。
- 開発で使用した仕様書や議事録を残しておく
- 開発や操作方法のマニュアルを整備する
- 定期的に研修を行う
また、システム開発の経過記録や開発者の体験談も共有することをおすすめします。これにより、既存システムの改修や新規開発が効率的に行えるでしょう。
不具合・破損リスクに注意する
自作の生産管理システムを利用する場合、不具合の発生やデータが破損するリスクが高い傾向にあります。
- コードの入力ミスによるバグの発生
- 災害によりパソコンやサーバーが破損し、データが消失
- ほかのシステムへの移植時にデータを消失
上記のような事態に陥らないためにも、運用に関するルールを設けることが重要です。許可なくコードを変更しない、指定されたシステム以外への移植は行わないなど、具体的なルールを設定しましょう。また、クラウドの活用やデータのバックアップを行い、万が一の事態に備えておくことも大切です。
スモールスタートを心がける
生産管理システムを自作する際には、以下のポイントを意識し、必要に応じて改善を行いながら運用していきましょう。
- 最低限の機能でスタートし、必要に応じて徐々に拡張する
- 一部の業務や部署から導入し、徐々にほかの部署などにも展開していく
- 導入後の効果を定期的に測定し、利用者の声を取り入れながら改善する
システムを自作した場合は、基本的に自社で改修を行う必要があります。スモールスタートで徐々に改善していくことで、リスクを抑えつつ業務の効率化を進められるでしょう。
生産管理システム自作のメリット・デメリットを理解しよう
生産管理システムを自作することにより、業務効率化やコスト削減を実現する有効な手段と言えます。しかし、システムの自作には専門知識が必要となる場面もあります。定期的なメンテナンスや予期せぬトラブルへの対応を自社で行う必要があり、リソースがない企業では難しい場合もあるでしょう。
実際の運用において成功を収めるためには、メリット・デメリットを十分に理解し、適切な計画と対策を講じることが不可欠です。生産管理システムを自作してみたいという場合は、導入目的を明確にすることからはじめてみましょう。
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