中小企業省力化投資補助金とは?補助対象や条件、申請フローまで解説
中小企業省力化投資補助金は、中小企業の生産性向上を支援するために設けられた補助金です。この記事ではこの補助金について、概要や設けられた背景などをふまえつつ、メリットや申請要件、注意点なども併せてわかりやすく解説します。申請における注意点なども紹介していますので、ぜひ最後までご確認ください。
目次
中小企業省力化投資補助金の概要
まずは中小企業省力化投資補助金の概要について確認しましょう。
中小企業省力化投資補助金とは?
中小企業省力化投資補助金とは、人手不足に苦しむ中小企業を対象に、省力化につながる製品を導入する際に支給される補助金です。
人手不足解消のために生産性を向上させるITツールなどを導入したいと考えても、予算の都合で実現が難しい中小企業は少なくありません。
こういった中小企業を支援するため、経済産業省関係の令和5年度補正予算としてこの補助金が設けられました。
中小企業省力化投資補助金が設けられた背景
中小企業省力化投資補助金が設けられた背景には、少子高齢化による生産年齢人口(15〜64歳)の減少があります。日本は1995年以降生産年齢人口が減少し続けており、さまざまな業界が深刻な人手不足に陥っているのです。
こういった状況を受け、政府は特定技能制度や育成就労制度などの外国人労働者を受け入れる制度を設けたり、障がい者や高齢者の雇用を推進したり、さまざまなアプローチを行っています。
とはいえ、これらのアプローチだけでは人手不足を完全に解消することは難しく、各企業が生産性を高め、省力化を図ることも求められているのです。
こういった流れの中で「省力化に取り組みたいものの予算の都合で難しい」という中小企業を支援すべく、中小企業省力化投資補助金が設けられました。
中小企業省力化投資補助金に関連する用語
中小企業省力化投資補助金制度の説明や要件には、いくつかの専門的な用語が登場します。
そのなかでも重要なものとして、以下の3つの用語を押さえておきましょう。
省力化製品 | 中小企業省力化投資補助金の対象として、カタログに登録されている製品のことを指します。省力化指標などに照らし合わせて審査され、中小企業庁に承認された製品のみが、省力化製品としてカタログに登録されます。 |
省力化製品販売事業者 | 省力化製品を販売し、中小企業をはじめとする補助金利用者と共同で補助金の申請を行う事業者を指します。省力化製品販売事業者になるには、あらかじめ審査を受け、採択される必要があります。 |
補助事業者 | 省力化製品によって人手不足の解消を目指す中小企業などを指します。省力化製品販売事業者と共同で申請を行い、生産性向上に向けた取り組みを実施します。 |
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
中小企業省力化投資補助金の活用例
中小企業省力化投資補助金の活用例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 宿泊施設
- 清掃ロボットの導入
- 自動チェックイン機の導入
- 飲食店
- 配膳ロボットの導入
- 券売機の導入
- 製造企業
- 自動検品・仕分システムの導入
- 無人搬送車の導入
- スーパーマーケット・コンビニ
- 自動精算機の導入
- バックヤードにおける飲料補充ロボの導入
[出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ」]
中小企業省力化投資補助金の補助対象
次に、中小企業省力化投資補助金の補助額や補助対象についてご紹介します。
補助率と補助上限額
中小企業省力化投資補助金の補助率は一律でかかった費用の1/2ですが、補助上限額については従業員数や賃上げの有無などによって以下のように変わります。
従業員数 | 補助上限額 | 補助事業期間に一定以上の賃上げを達成した場合の上限額 |
5名以下 | 200万円 | 300万円 |
6~20名以下 | 500万円 | 750万円 |
21名以上 | 1000万円 | 1500万円 |
補助事業期間とは、この制度を利用して導入した省力化製品を活用し、生産性向上に取り組む期間のことを指します。賃上げによる上限額の引き上げの適用を受ける場合は、あらかじめ以下の2点を含めた事業計画を策定し、申請しなければなりません。
- 給与支給総額+6%以上
- 事業場内最低賃金+45円以上
賃上げによる上限引き上げを想定して申請しても、補助事業期間中に要件を満たせなかった場合は通常の上限額が適用されます。
[出典:中小企業庁「中小企業省力化投資補助金」]
補助対象となる事業者
中小企業省力化投資補助金の対象となる事業者は、大きく以下の3つのカテゴリに分けられます。
1.中小企業
中小企業省力化投資補助金の対象として、まず挙げられるのは中小企業です。具体的には資本金、あるいは常勤の従業員が以下の基準を下回っている事業者が対象となります。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
2.組合や連合会
次に対象として挙げられるのは、組合や連合会に該当する以下の法人です。
- 企業組合
- 協業組合
- 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
- 商工組合、商工組合連合会
- 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
- 水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
- 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
- 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
- 内航海運組合、内航海運組合連合会
- 技術研究組合
3.その他の事業者
その他、特定要件を満たした特定非営利活動法人(NPO)や社会福祉法人なども対象となります。具体的な要件などについては、中小企業省力化投資補助金の公募要領をご確認ください。
補助対象となる製品カテゴリ
中小企業省力化投資補助金は、省力化製品であればどれでもよいわけではなく、あらかじめカタログに登録された製品に限って適用されます。
カタログに登録される製品は以下の25カテゴリに分かれており、この中から自社の課題に合わせた製品を選び、導入することになります。
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[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 製品カテゴリ」]
補助対象となる経費
中小企業省力化投資補助金の対象となる経費は、「省力化製品の本体価格」と「製品導入に要した費用」です。
製品本体価格については、カタログに登録されている価格を上限として申請することになります。一方で、省力化製品のレンタル契約や、補助金交付が決定する前に購入した製品の購入費用などは補助対象外です。
導入経費としては、省力化製品の設置作業や運搬、動作確認にかかる費用などが対象となります。ただし、製品の試運転に伴う原材料費や光熱費、補助金申請や報告に関する代行費用などは対象外です。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金とは」]
中小企業省力化投資補助金を活用するメリット
中小企業省力化投資補助金を活用するメリットには何があるのかを見ていきましょう。
コストを抑えながら生産性向上を実現できる
自社の費用負担を抑えつつ省力化製品を導入できることが、中小企業省力化投資補助金を活用する最大のメリットです。大企業と比較して潤沢な予算がないことが多い中小企業であっても、省力化製品を導入し、生産性向上を実現できるでしょう。
自社のニーズに応じて幅広い製品から選べる
カタログには清掃ロボットや検品・仕分システム、券売機など、全25カテゴリにも及ぶ幅広い製品が登録されています。これら多岐にわたる省力化製品の中から、自社の課題やニーズに応じて適切なものを選ぶことが可能です。
従業員の満足度やエンゲージメントが向上する
省力化製品を導入し業務効率が高まれば、従業員の負荷やストレスの軽減にもつながります。生産性向上によって無駄なコストが削減された分を賃上げに反映すれば、従業員の満足度やエンゲージメントも高まるでしょう。
採用力が高まる
中小企業省力化投資補助金を活用して生産性が高まると、労働者にとってより働きやすい企業となります。省力化の成果を賃金に反映し、他企業よりも高水準な賃金を実現することで、求職者に対する有効なアピールポイントとして活用できるでしょう。
販売事業者からサポートを受けられる
中小企業省力化投資補助金は、中小企業単独ではなく、省力化製品販売事業者と共同申請を行うことで交付を受けます。共同申請を行う販売事業者からは製品の導入や運用についてもサポートを得られるため、より確実かつ効果的に省力化に取り組むことができるでしょう。
中小企業省力化投資補助金を申請するための要件
中小企業省力化投資補助金を申請するには、特定の要件を満たす必要があります。事業の要件と事業者における要件に分けて確認しましょう。
補助対象となる事業の要件
中小企業省力化投資補助金の対象となるには、事業が以下の要件をすべて満たしていなければなりません。
- 導入する省力化製品に紐づけられた業種のうち、少なくとも1つ以上が自社事業の業種と合致していること
- カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を、補助対象として事業計画に組み込むこと
- 労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
- 補助上限額の引き上げを行う場合、賃上げの目標を設定したうえで、従業員に表明し、その実現に向けて取り組むこと
- 省力化製品を、紐づけられている業種やプロセス以外に使う事業ではないこと
- 労働生産性の目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施すること
- 効果報告期間が終了するまで、自然退職や自己都合退職ではない従業員の解雇を積極的に行わないこと
- 補助額が500万円以上の場合、保険への加入を行うこと
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
補助対象となる事業者の要件
中小企業省力化投資補助金を申請する事業者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 人手不足の状態であることが確認できること
- 全ての従業員の賃金が最低賃金を超えていること
- 風営法第2条に規定された営業を営む事業者(キャバクラやパチンコ屋など)でないこと
- 過去1年において、労働関連法令違反により送検処分を受けていないこと
- 補助対象となる中小企業や組合などの要件を満たした事業者であること
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金などと重複利用していないこと
- 補助対象となる事業の要件を満たしていること(前項参照)
- 公募要領の遵守事項を徹底すること
- gBizIDプライムを取得していること
なお要件の1つ目である人手不足の状態については、以下のいずれかを証明しなければなりません。
- 従業員の直近の平均残業時間が30時間を超えている
- 整理解雇ではない離職・退職によって従業員が前年比で5%以上減少している
- 採用活動を行い、求人を掲載したものの、充足には至らなかった
- その他、省力化を推し進める必要に迫られている
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
中小企業省力化投資補助金の活用の流れ
ここからは、中小企業省力化投資補助金の活用の流れについて、公募スケジュールをふまえてご紹介します。
公募スケジュール
中小企業省力化投資補助金の公募・申請スケジュールは、2024年10月時点では随時受付中となっています。中小企業の省力化をできるだけ早く実現するために、当面の間は随時受付を行うことになっているようです。
また、申請してから採択・交付の決定まではおおよそ1〜2か月程度かかります。補助事業期間は交付決定日から12か月以内が原則です。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「スケジュール」]
中小企業省力化投資補助金の申請における全体フロー
中小企業省力化投資補助金の申請・交付の全体フローには、全部で7つのステップがあります。一つずつ個別に見ていきましょう。
1.事前準備・事業計画の策定
まず事前準備として、この補助金の制度についての理解を深めつつ、電子申請を行うためのgBizIDプライムアカウントを取得します。その後、自社の課題やニーズをふまえつつ、製品カタログの中から省力化製品と販売事業者の選定を行う流れです。
また、労働生産性を年平均3.0%以上向上させる事業計画を策定します。賃上げによる上限額の引き上げを適用する場合は、賃上げの目標値についても事業計画に盛り込まなければなりません。
2.交付申請
事業計画を策定したあとは、販売事業者と共同で交付申請を実施します。共同申請に際しては、事務局が示した共同事業実施規約と宣誓書に同意し、その旨を申告しなければなりません。
なお、交付申請時に提出する決算や賃金に関する情報については、申請時点で期末を迎えている直近の事業年度の値、直近の月の値を用いる必要があります。
3.採択通知・交付決定
交付申請した内容について、事務局による審査が行われます。審査に通過して補助事業として採択されることで、補助金の交付決定となるのです。
交付決定となった旨は、補助事業者と販売事業者の双方に対して申請受付システムによって通知されます。
4.補助事業期間
交付決定日から原則として12か月以内が補助事業期間として扱われます。
選定した省力化製品の導入に加え、生産性向上や賃上げのための事業計画に沿って、各施策に取り組みます。その後、支払い内容や導入実績、達成状況などをまとめた事業実績報告を提出することになるのです。
5.補助額の確定と支払い
提出した事業実績報告について事務局が審査を行い、補助額を確定します。補助額が確定したあとは、事務局に対する補助金の支払い請求が必要です。
なお、生産性向上や賃上げの達成状況によっては、補助額が減額されるケースもある点には注意しましょう。
6.効果報告期間
補助事業完了後の最初の4月1日を起算日とした3年間は、毎年事務局が定める期限までに効果報告を実施しなければなりません。省力化製品の使用状況や生産性向上の状況などが報告対象となります。
期限までに効果報告を実施しない場合、交付決定が取り消される場合もあるため注意してください。
7.財産管理期間
効果報告期間が終了したあとについては、財産管理期間が設けられています。具体的には、導入した省力化製品が法定耐用年数を迎えるまで、管理・活用していくことが求められるのです。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
中小企業省力化投資補助金を利用する際の注意点
最後に、中小企業省力化投資補助金を利用する際の注意点について確認しましょう。
補助金の交付は実績報告後になる
中小企業省力化投資補助金の交付は実績報告後であるため、申請してすぐには受け取れず、12か月以内の補助事業期間が経過したあとに行われます。
そのため、補助事業を開始するタイミングでは、自社の予算から省力化製品の導入費用を捻出する必要があります。
また、実績報告の審査次第では、実際に交付される補助金が減額される可能性もあるため、想定よりも自社の負担を軽減できないケースがある点には留意しましょう。
保険加入が必要なケースがある
導入する省力化製品に対する補助額が500万円を超える場合、保険金額が補助額以上である保険や共済へ加入することが求められる点にも注意が必要です。
これは、補助事業期間中に自然災害などによって省力化製品を損失し、補助事業を完遂できない場合に備えるためです。
具体的には、実績報告を提出する際に、保険加入を証明する書類も併せて提出しなければなりません。なお、保険加入に関する費用は補助対象外となるため注意してください。
また、事務局としては、補助額が500万円を超えない場合であっても、万が一に備え保険に加入しておくことを推奨しています。
導入製品の処分に制限が設けられている
補助事業によって導入した省力化製品については、補助金適正化法第22条に基づき処分に制限が設けられています。
そのため、効果報告期間終了後も、法定耐用年数を経過する前に処分を行う場合は、事前に事務局の承認を受けたうえで、残存簿価相当額などを納付しなければなりません。
仮に事務局の許可を得ることなく処分や転売などを行った場合、交付決定が取り消されてしまうため注意しましょう。
その他の補助金と併用できない
中小企業省力化投資補助金は、その他の補助金とは併用できないことがある点にも注意しましょう。
例えば「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」について、交付決定から10か月経過していない事業者や、過去3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は中小企業省力化投資補助金を利用できません。
「事業再構築促進補助金」や「IT導入補助金」も、導入する事業が中小企業省力化投資補助金と同一である場合は、併用できないため注意しましょう。
その他、「観光地・観光産業における人材不足対策事業」によって、設備投資の補助金を利用している事業者も併用できません。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 公募要領」]
中小企業省力化投資補助金で生産性向上を実現しましょう!
日本は超高齢化社会に突入しており、働き手となる現役世代の不足が今後も続くため、少ない人手でも事業が成り立つ仕組みや環境を構築することが重要です。中小企業省力化投資補助金は、このような課題に取り組む中小企業にとって有用な支援策となります。より詳しく知りたい方は以下の公式サイトをご確認ください。
[出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助金」]
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