ナレッジ経営とは?実現に必要なことや押さえておくべきポイントを解説
現在の多様化した働き方の環境に対応するための経営手法のひとつが「ナレッジ経営」です。取り組みを行う前にどのような内容なのか把握しておきましょう。当記事では、ナレッジ経営について必要な要素や押さえておくべきポイントを解説します。
目次
ナレッジ経営とは何か?
多様化した働き方に対応できる経営手法として、ナレッジ経営が注目されています。
ナレッジ経営とは、社員一人ひとりが持つ知識やノウハウを言語化して社内全体で共有し、活用する経営手法です。特定の社員のみが知識やノウハウを所有する属人化をなくし、会社の財産として集約することで、社内全体のレベルアップを図ります。
ナレッジ経営によって社員が必要な情報に簡単にアクセスできるようになり、生産性の向上や社員教育の効率化につながるでしょう。
ナレッジという言葉の意味
ナレッジ(knowledge)は直訳すると知識や情報という意味です。ビジネスシーンでは、会社組織にとって有益な知識やスキル、ノウハウだけではなく、経験や体験に基づく知見なども該当します。
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ナレッジ経営が注目を集める理由
ナレッジ経営は時代の変化とともに、ますます注目が集まっています。ここでは、ナレッジ経営が注目を集める理由について解説します。
働き方の多様化
テレワークや在宅勤務など、働き方が多様化したことが理由のひとつです。働き方の多様化により、新入社員や中途社員などに対する教育環境や、現場で共有されていた情報をオンラインでも共有できる環境を整備することが求められました。
ナレッジ経営を実施することで、社内の情報共有がスムーズになり、さまざまな働き方にも対応できるようになります。
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デジタル技術の進歩
デジタル技術の進歩により、ITツールを用いた情報共有が容易になりました。コミュニケーションツールや動画マニュアル、社内wikiなどの多くのツールが登場しています。これにより、社員の持つ知識やノウハウを集約し、社内全体に展開しやすくなったのです。
終身雇用の減少
終身雇用の減少も理由のひとつとしてあげられます。終身雇用が当たり前だったころは、上司から部下へ直接知識やノウハウを棚卸ししていました。しかし、転職が当たり前となった現代では、知識やノウハウを直接受け継いでいくことは困難です。
特定のスキルや知識を持つ社員の転職・退職は、企業にとって大きな損失となってしまいます。このような情報の属人化によるリスクを防ぐために、ナレッジ経営は有効なのです。
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ナレッジ経営の実現に必要な要素
ナレッジ経営を行うためには、どのようなことをする必要があるのでしょうか。ここでは、ナレッジ経営の実現に必要な要素について解説します。
ナレッジ・マネジメント実践の場を設ける
まず、ナレッジの交換や共有ができる環境を整えることが必要です。ナレッジを保管し、共有するためのツールを用意しましょう。また、チャットツールやメーリングリストなどの活用も有効です。
ツールは社員が使いやすいものを選定することが大切です。ITツールを使い慣れていない社員など、誰もが扱いやすいツールを選べば、社内に浸透させやすくなります。
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ナレッジ・マーケットの推進
社員一人ひとりがナレッジを提供・交換したくなるような環境を整えることも重要です。
社員によっては、ナレッジを提供することで周りの社員のレベルが上がり、相対的に自身の評価が下がってしまうのではないかという不安や、ナレッジを言語化して共有するのが面倒といった気持ちを抱えています。こういった思いを払拭し、多くのナレッジが蓄積されるような制度や仕組みを整えましょう。
具体的には、ナレッジ共有を行った社員を評価する社内制度を整える取り組みなどが有効です。
経営者や責任者のリーダーシップ
ナレッジ共有を率先して行う人材も必要です。経営者だけではなく、チームごとに責任者を決め、ナレッジ経営に取り組みましょう。ナレッジ共有の意義を社員に伝えたり、実際にツールを使ってナレッジを共有したりすることで、他の社員の意識を高められます。
ナレッジ経営の実現を手助けする5つのツール
ナレッジ経営を実現するためには、ツールの活用が有効です。ここでは、ナレッジ経営の実現を手助けする5つのツールについて解説します。
1.社内SNS
社内SNSを導入すると社内のコミュニケーションが活発になります。情報を周知しやすく、迅速に社内共有が可能です。また、オープンな場で情報共有ができ、リアクションも取りやすいので、情報の伝達度も確認しやすいでしょう。
2.動画マニュアル
動画マニュアルは視覚と聴覚を使って情報を伝えられるので、言語化の難しいナレッジの共有が可能です。製造業の職人や接客を伴う飲食・サービス業など、細かい動きや感覚的な動きを伝えたい業種に適しています。
動画にすることで、実践のイメージが湧きやすいのもポイントです。また、気軽に視聴できるので、学習意欲を引き出しやすい点もメリットといえるでしょう。
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3.グループウェア
グループウェアにはビジネスチャットや社内wiki、掲示板など、社内コミュニケーションを円滑にする機能や、社内の情報共有に役立つ機能が多く備わっています。さらに、タスク管理やスケジュール管理、ワークフローなどの機能により、業務の効率化も可能です。
4.エンタープライズサーチ
エンタープライズサーチとは、保管場所に関係なく、社内のデジタルデータをまとめて検索できる企業向け検索エンジンのことです。キーワード検索が可能で、膨大なデータから必要な情報を素早く見つけられます。
また、必要に応じてアクセス権限を設定できるため、情報漏洩のリスクを抑え、安心して利用できることも特徴です。
5.ヘルプデスク
ヘルプデスクとは、社員からの問い合わせに対応する窓口やシステムのことです。質問回数の多い項目をデータベース化することで、問い合わせへの対応業務を減らせます。社員が自力で問題解決できるので、業務を効率化できる点もメリットです。
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ナレッジ経営のために知っておきたい用語
最後に、ナレッジ経営のために知っておきたい用語について解説します。
暗黙知
暗黙知とは、個人の経験や知見に基づく言語化が難しい知識やノウハウのことを指します。よって、他者に継承しにくく、属人化しやすい情報です。例えば、製造業における職人の持つ技術や、クリエイターのセンスなどがあげられます。
形式知
形式知とは、言語化された知識やノウハウのことです。暗黙知とは対義語の関係にあり、情報やデータに基づく客観的なものといえます。例えば、業務マニュアルや社内wiki、料理のレシピなどが該当します。
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SECIモデル
SECIモデルとは、個人の持つ暗黙知を形式知に変換するための手順を示した理論です。共同化(Socialization)・表出化(Externalization)・連結化(Combination)・内面化(Internalization)の4つのステップからなっており、それぞれのイニシャルを取って命名されています。
共同化は経験を共有することで暗黙知を伝えるプロセスです。また、表面化は個人の暗黙知を言語化してメンバーに共有することを指します。言語化された知を組み合わせ、新たな知を創造することで連結化を行います。さらに、表出化や連結化で得た知を自らの知として吸収することで内面化が可能です。
これらのステップを繰り返すことで、暗黙知を形式知として変換・継承できます。
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トランザクティブ・メモリー
トランザクティブ・メモリーとは、誰が何のナレッジを持っているか把握することです。1980年代半ばにアメリカの社会心理学者であるダニエル・ウェグナーによって提唱されました。プログラミングなど、理解するための専門知識が必要となるナレッジで活用される考え方です。
社内のすべてのナレッジを共有しても、個人が理解できるナレッジには限界があります。そこで、専門知識を持つスペシャリストを社内で共有しておくことで、業務の効率化が可能となるのです。
コード化戦略
コード化戦略とは、個人の持つ知を言語化・デジタル化してデータベースに蓄積し、社内全体で利用しやすい環境を整えることを指します。例えば、営業で得た情報を集積し、商品開発に活かすことがあげられます。
個人の持つさまざまな知を再利用できるようにすることで、業務の効率化やコスト削減に繋げられるのがメリットです。
個人化戦略
個人化戦略とは、コード化できない暗黙知を人から人へ直接継承することを指します。専門知識などの共有に用いられ、対面での会話・電話・メールのほか、ネットワークなどを通じて元の知識をさらに深めていくことが可能です。
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実践前にナレッジ経営という手法について理解を深めよう
ナレッジ経営とは、個人が持つ知識やノウハウを言語化して社内全体で共有し、活用する経営手法です。デジタル技術の進歩や終身雇用の減少により、近年注目を集めています。
ナレッジ経営を実施することで、多様な働き方に対応できたり、社内の情報共有が活発になったりするメリットがあります。また、社内全体のスキルレベルが向上し、業務の効率化にも繋がるでしょう。
実際に取り入れる前には、ナレッジ経営について理解を深めることが大切です。ナレッジ経営の実現に必要な要素や手助けしてくれるツール、用語の意味などを理解し、効果的にナレッジ経営を取り入れていきましょう。
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